「ちょっと」。1997年4月上旬のある日、事業報告を終えて社長室を辞そうとしたときだった。帝人専務(現会長)の安居祥策は、社長(現相談役)の板垣宏に呼び止められて立ち話になった。「君に社長をやって欲しいと思っている」 安居は「他の人がいるでしょうに……」と言ったきり言葉が出ない。「普通ならば考える時間をあげるのだが、ここで、すぐに返事をしてくれ」と、板垣は有無を言わさぬ迫力でたたみかけた。「私も含めて誰もが、私が社長になれるとは考えていなかったし、優れた諸先輩がたくさんいた。もし考える時間を1日もらえていたら絶対に断っていた」

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