国際論壇レビュー

平壌への道はバグダッドを経由している

 北朝鮮が濃縮ウランを使った核開発計画を実行しているとの告白を行なったことは、イラク問題で緊迫する国際情勢をさらに複雑にするものであった。拉致問題に集中しがちな日本での議論と比較するとき、北朝鮮の核開発については、国際的に厳しい見方が多く示された。このような中、バリ島をはじめ各地でテロ活動は活発化している。イラク攻撃が準備される今、世界はますます緊迫している。     *『ワシントン・ポスト』紙社説によれば、「秘密核開発計画を実行しているとの北朝鮮の衝撃的な告白についての最も楽観的な説明は、この告白によって、その気のなさそうなブッシュ政権を真剣な政治交渉に引きだそうとしたのだというものである」。しかし、ブッシュ政権は、これまでのところその誘いに乗っていない。その代わりに、日本、中国、韓国などとの連携を強めて、北朝鮮に核開発計画の断念をせまる圧力を強めている。このような努力が「成功するかどうか分からない」と同紙社説は認めるが、これは「他の二つの代替策よりは、今のところ望ましい政策だ」と指摘している。二つの代替策とは、第一は先制的軍事攻撃であり、第二は脅しへの屈服だからだという(“Answering North Korea”『インターナショナル・ヘラルド・トリビューン(IHT)』、十月十九日―二十日)。

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執筆者プロフィール
田中明彦(たなかあきひこ) 1954年、埼玉県生まれ。東京大学教養学部卒業。マサチューセッツ工科大学大学院博士課程修了(Ph.D. 政治学)。東京大学東洋文化研究所教授、東京大学副学長、国際協力機構(JICA)理事長、政策研究大学院大学学長、三極委員会アジア太平洋地域議長などを経て、2022年4月より再び国際協力機構(JICA)理事長に就任。著書に『新しい「中世」―21世紀の世界システム』(サントリー学芸賞受賞)、『ワード・ポリティクス―グローバリゼーションの中の日本外交』(読売・吉野作造賞)、『アジアのなかの日本』、『ポスト・クライシスの世界―新多極時代を動かすパワー原理』など。
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