三重県鈴鹿市長沢町「羽田製茶」の跡取り息子・羽田直樹(一九七一年生れ)には、少年時代に緑茶以外のものを飲んだ記憶がない。それは「お茶屋が茶を飲まなくてどうする」という父親の教育方針ゆえであった。 そんな環境で育った直樹にとって、高校を出たらすぐ家業を継ぐのがごくごく自然な選択肢だった。しかし高校時代に図書館で読んだウィリアム・ギブスンの『ニューロマンサー』に衝撃を受け、プログラマーを自分の職業にしようと決心した。コンピュータは現代の魔術だ、そしてそれを自在に操るプログラマーはウィザード(魔法使い)に違いない、そう確信したからだった。

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