インテリジェンス・ナウ

「国連盗聴疑惑」暴露で実は助かったブレア首相

執筆者:春名幹男 2004年4月号
エリア: ヨーロッパ

 絶妙のタイミングだった。“反戦のヒロイン”となった英政府通信本部(GCHQ)の元翻訳官キャサリン・ガンさん(二九)に対する英政府機密法違反事件の起訴取り下げが発表された二月二十五日の翌朝に、より大きな盗聴疑惑が表面化したのだ。 次の主役はクレア・ショート元英国際開発相。BBCラジオのインタビューで、昨年のイラク開戦前に、英情報機関がアナン国連事務総長を盗聴していたと暴露したのである。 表面的には、イラク大量破壊兵器の情報操作疑惑の後遺症になお悩むブレア英政権を一層窮地に陥れた発言と見えた。英労働党左派のショート女史はそれほど首相を追い詰めたいのか、とも思えた。

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執筆者プロフィール
春名幹男(はるなみきお) 1946年京都市生れ。国際アナリスト、NPO法人インテリジェンス研究所理事。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授、早稲田大学客員教授を歴任。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『米中冷戦と日本』(PHP)、『仮面の日米同盟』(文春新書)などがある。
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