「ウィキリークス」中南米での波紋

執筆者:遅野井茂雄 2011年1月18日
エリア: 中南米

 告発サイトで米外交の機密情報が流出したことは、2000年以降左派政権が台頭する中で、中南米で失った影響力を回復しようとしてきたオバマ政権の中南米外交において、明らかにマイナスである。今後アメリカ外交への信頼の低下がまねく問題の大きさは計り知れないものがあろう。

 だが、中南米に関しこれまで公開された情報は、アメリカ政府が発表した外交方針に照らしてみれば想定される範囲での活動内容を示すものであり、驚きは少ない。むしろ外交政策との整合性を立証するものとして評価する論調もある(例えば、12月5日付スペイン、エル・パイス紙への米フォーリン・ポリシー誌編集長モイセス・ナイム氏の寄稿)。当面の政治的余波も、チャベス大統領がクリントン国務長官の辞任を求めたぐらいで小さく、米首脳がお詫び行脚をする中で、中南米諸国側も顔をしかめながらも慎重に対応しているというのが現状だ。

カテゴリ: IT・メディア
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執筆者プロフィール
遅野井茂雄(おそのいしげお) 筑波大学名誉教授。1952年松本市生れ。東京外国語大学卒。筑波大学大学院修士課程修了後、アジア経済研究所入所。ペルー問題研究所客員研究員、在ペルー日本国大使館1等書記官、アジア経済研究所主任調査研究員、南山大学教授を経て、2003年より筑波大学大学院教授、人文社会系長、2018年4月より現職。専門はラテンアメリカ政治・国際関係。主著に『試練のフジモリ大統領―現代ペルー危機をどう捉えるか』(日本放送出版協会、共著)、『現代ペルーとフジモリ政権 (アジアを見る眼)』(アジア経済研究所)、『ラテンアメリカ世界を生きる』(新評論、共著)、『21世紀ラテンアメリカの左派政権:虚像と実像』(アジア経済研究所、編著)、『現代アンデス諸国の政治変動』(明石書店、共著)など。
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