核燃料再処理工場「六ヶ所村」はどういう所か

執筆者:出井康博 2011年4月28日
タグ: 原発 日本
エリア: アジア
高い柵で囲まれた再処理工場(写真は4点とも筆者撮影)
高い柵で囲まれた再処理工場(写真は4点とも筆者撮影)

 在日米軍基地で有名な青森県三沢市を抜け、本州最北端の下北半島を車で北上すること約30分。でこぼこの目立っていた狭い国道が、突然、高速道路のように広く平坦な道に変わる。それが六ヶ所村に入った証だった。  六ヶ所村は、下北半島の太平洋側に位置する村だ。面積は大阪市よりも広いが、人口は1万1千に過ぎない。かつては「日本の満州」と呼ばれた貧しい村だった。畜産や漁業以外に産業は乏しく、冬になると東京へと出稼ぎに向かう村民も多かった。しかし、1980年代半ば、原子力発電のための核燃料を再処理する工場を誘致したことで状況は一変した。  今や六ヶ所村は、全国有数の豊かな自治体となった。1人当たりの村民所得は年1364万円(2008年度)と、青森県の平均237万円を6倍近く上回る。1人当たり所得には企業所得も含まれ、単純に個人の所得水準を指すものではない。とはいえ、再処理工場の誘致で、六ヶ所村が以前とは見違えるリッチな村に生まれ変わったことは間違いない。

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執筆者プロフィール
出井康博(いでいやすひろ) 1965年、岡山県生れ。ジャーナリスト。早稲田大学政治経済学部卒。英字紙『日経ウィークリー』記者、米国黒人問題専門のシンクタンク「政治経済研究ジョイント・センター」(ワシントンDC)を経てフリーに。著書に、本サイト連載を大幅加筆した『ルポ ニッポン絶望工場」(講談社+α新書)、『長寿大国の虚構 外国人介護士の現場を追う』(新潮社)、『松下政経塾とは何か』(新潮新書)など。最新刊は『移民クライシス 偽装留学生、奴隷労働の最前線』(角川新書)
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