メディアで働く私が恐れること

  ヨハネスブルク駐在の特派員時代、筆者の悩みはアフリカに関する記事を書いて日本の本社に送っても、それがなかなか掲載されないことであった。この現実は、誰が特派員になっても簡単には変わらないだろう。アフリカに対する日本人の関心の相対的な低さを思えばやむを得ないと分かってはいるものの、現場の記者にとっては残念なことである。

 だが、悪いことばかりではなかった。アフリカ駐在特派員は本社から半ば忘れられた存在なので、本社の意向を忖度(そんたく)して原稿を執筆する必要がないのである。ましてや、ある特定のニュースについて東京から執筆命令が来ることは、まずない。「日本向け」の記事を執筆するよう有形無形の圧力を受けることがないので、アフリカではほとんど問題視されていないような事実を「日本向け」に敢えて大騒ぎし、針小棒大な原稿を書く必要もない。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
白戸圭一(しらとけいいち) 立命館大学国際関係学部教授。1970年生れ。立命館大学大学院国際関係研究科修士課程修了。毎日新聞社の外信部、政治部、ヨハネスブルク支局、北米総局(ワシントン)などで勤務した後、三井物産戦略研究所を経て2018年4月より現職。著書に『ルポ 資源大陸アフリカ』(東洋経済新報社、日本ジャーナリスト会議賞受賞)、『日本人のためのアフリカ入門』(ちくま新書)、『ボコ・ハラム イスラーム国を超えた「史上最悪」のテロ組織』(新潮社)など。京都大学アフリカ地域研究資料センター特任教授、三井物産戦略研究所客員研究員を兼任。
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