台湾vs.フィリピン:外交制裁の手段となる出稼ぎ労働者

執筆者:野嶋剛 2013年5月16日
エリア: アジア

 台湾漁船に対するフィリピン沿岸警備隊の銃撃で台湾漁民の船員1人が死亡した問題で、昨日、台湾の総統府はフィリピンに対する8項目の制裁措置を発動させると発表した。基本的には偶発的な問題のようなので、数カ月内に双方が感情を落ち着かせたところで手打ちが行なわれ、鎮静化していくのではないかと個人的には見ているが、それとは別に興味深かったのが、大使召還など台湾の制裁措置のメニューの中で、フィリピン人労働者の台湾での就労に新規ビザを出すことを凍結する内容が含まれていたことだ。

 外交上の問題で出稼ぎ労働者が制裁措置の1項目に入ること自体が新鮮だ。それだけフィリピンにとっても台湾にとっても現実的なインパクトがある問題ということである。

カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
野嶋剛(のじまつよし) 1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に『イラク戦争従軍記』(朝日新聞社)、『ふたつの故宮博物院』(新潮選書)、『謎の名画・清明上河図』(勉誠出版)、『銀輪の巨人ジャイアント』(東洋経済新報社)、『ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち』(講談社)、『認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾』(明石書店)、『台湾とは何か』(ちくま新書)、『タイワニーズ 故郷喪失者の物語』(小学館)、『なぜ台湾は新型コロナウイルスを防げたのか』(扶桑社新書)など。訳書に『チャイニーズ・ライフ』(明石書店)。最新刊は『香港とは何か』(ちくま新書)。公式HPは https://nojimatsuyoshi.com
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