巨大プラントの性能を左右する「科学の翻訳力」――「エンジニアリング」の強さとは何か 2

執筆者:船木春仁 2006年3月号
タグ: アメリカ 日本

 ペルシア湾に突き出た小国カタール。首都ドーハから車で一時間ほど走ると、広大な砂漠地帯のあちこちに巨大なLNG(液化天然ガス)のプラントが林立しているのが見えてくる。世界で三番目の天然ガス埋蔵量を誇るラスラファン・ガス田である。 LNGプラントの周りには街らしいものはなく、砂漠のなかにただ巨大な設備を置いている、というイメージである。建設中のプラントは、骨組みとタンクのようなものだけで壁がなく、それがかえって機能美を感じさせる。 LNGプラントでは、原料となる天然ガスの搬入からLNGの出荷までのさまざまな施設を、一つの連続したユニットとして構成し、プラント全体で複数のユニットを建設する。一つのユニットの大きさは、長さが数百メートル、幅が四〇―五〇メートル、高さが六〇メートルもあり、これが二つ、三つと砂漠のなかに整然と並んでいる。ユニットは、客車や貨車が連結された汽車になぞらえて「トレイン」と呼ばれ、千代田化工建設が受注した世界最大のLNGプラントは、一トレインで年間七八〇万トンのLNGを生産する。それだけで、世界のLNG生産量の五%を占める巨大なものだ。

カテゴリ: 経済・ビジネス
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