中国に文化大革命があって、日本の新聞がこぞってそれを称賛していた頃、私は新聞社の出す週刊誌編集部でデスクをしていた。欧米の新聞を見ると、さかんに林彪のことを書いている。出席すべき会合に出ず、発言すべき機会に声がない等々。 林は、中国共産党の規約か何かで、毛沢東の後継者と定められている。そういう人物をめぐる異変に、週刊誌が黙っている手はない。私は英語の新聞・雑誌記事を集め、「中国で何かが起っている」という二ページか三ページの特集をデッチ上げてウチの週刊誌に載せた。 発行日の朝だった。出版局と同じフロアにある新聞編集局から外信部長がつかつかと我が編集部に歩み寄り、雑談中のデスク三人を、見下ろして一喝した。
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