接近する中露「プーチンの苦境」と「習近平の漁夫の利」

 ウクライナ問題の渦中にあるロシアのプーチン大統領は4月17日、毎年恒例のテレビ特番で4時間近くウクライナ情勢を中心にしゃべりまくったが、この中で中国を「同盟国」と称したことが気になった。国際的孤立を深めるロシアは一段と中国に傾斜しており、5月下旬に予定されるプーチン訪中が焦点になる。中国はウクライナ領クリミア併合を承認する代わりに、ロシアに尖閣の領有権問題で中国を支持するよう画策しているとの不気味な情報もある。

 

軍事関係も強化へ

 プーチン大統領は中国に関する質問に対し、「中露関係は信頼と協力の点で、前例がないほど成功裏に進展している。政治協力に加え、国際問題や国際安全保障でも意見が一致し、それが政府間関係の基礎になっている。われわれはむろん隣国であり、ある意味で同盟国だ」と述べた。大統領は「軍事、政治的同盟の問題は提起しない」と付け加えたが、ロシア首脳が中国を「同盟国」と称したのは初めて。中国もこうした表現は一切使っていない。

フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
名越健郎(なごしけんろう) 1953年岡山県生まれ。東京外国語大学ロシア語科卒業。時事通信社に入社、外信部、バンコク支局、モスクワ支局、ワシントン支局、外信部長、編集局次長、仙台支社長を歴任。2011年、同社退社。拓殖大学海外事情研究所教授。国際教養大学特任教授を経て、2022年から拓殖大学特任教授。著書に、『秘密資金の戦後政党史』(新潮選書)、『ジョークで読む世界ウラ事情』(日経プレミアシリーズ)、『独裁者プーチン』(文春新書)など。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top