テロリストの誕生(6)解明すべき「女たちの役割」

執筆者:国末憲人 2015年5月15日
タグ: フランス
エリア: ヨーロッパ 中東

 アメディ・クリバリの妻アヤト・ブメディエンヌは、謎の多い女性である。フランスのメディアに、彼女の出自を巡る記事は少ない。彼女はフランス生まれのフランス人だが、「ブメディエンヌ」はアルジェリアに見られる姓で、北アフリカから来た移民家庭の出身だと考えられる。アヤト(アラビア語ではハヤト)という名も、イスラム教徒に多いもので、移民系以外のフランス人にはあまり見られない。

 連続テロ事件後に世界に出回った彼女の顔写真は、暗く、愛想のなさそうな表情をしている。地味な印象は拭えない。しかし、笑ったときの写真を見ると、愛嬌があってなかなかの美人である。週刊誌『パリマッチ』は、彼女とクリバリとが一緒に写った2010年初めの写真を掲載したが、民族衣装をまとったふくよかな彼女は、上品な笑顔を見せている。

カテゴリ: 政治 社会
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執筆者プロフィール
国末憲人(くにすえのりと) 東京大学先端科学技術研究センター特任教授 1963年岡山県生まれ。85年大阪大学卒業。87年パリ第2大学新聞研究所を中退し朝日新聞社に入社。パリ支局長、論説委員、GLOBE編集長、朝日新聞ヨーロッパ総局長などを歴任した。2024年1月より現職。著書に『ロシア・ウクライナ戦争 近景と遠景』(岩波書店)、『ポピュリズム化する世界』(プレジデント社)、『自爆テロリストの正体』『サルコジ』『ミシュラン 三つ星と世界戦略』(いずれも新潮社)、『イラク戦争の深淵』『ポピュリズムに蝕まれるフランス』『巨大「実験国家」EUは生き残れるのか?』(いずれも草思社)、『ユネスコ「無形文化遺産」』(平凡社)、『テロリストの誕生 イスラム過激派テロの虚像と実像』(草思社)など多数。
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