
日米関係に地殻変動が起きた。筆者は4月28日から5月2日にかけて、安倍首相訪米に合わせて行われるシンポジウムや討論会に参加するためにワシントンに滞在した。ワシントンを訪れるのは今年2回目であったが、今ここで日米関係に携わっている関係者は独特の高揚感と緊張感に包まれているのを肌で感じた。長年日米関係に関わってきた人たちも異口同音に「日本がこれほど注目を集めたのはいつ以来か記憶にない」と語っていた。その意味で、安倍首相の弁を借りれば、 “Japan is back” である。
翻って日本での報道を見てみると、米国、とくにワシントンの歓迎ぶり、安倍首相訪米に対する高い評価が現場どおりに伝わっていないように思われる。日本のメディア関係者は首相に付いて歩いているのであろうから、筆者が出席したようなシンポジウムや討論会にはまず参加していないであろう。
安倍首相の米国議会での演説は、後でYouTube で見たり、リリースされた原稿を読んだりできるので、キャッチアップすることはできよう。日本国内のマスメディアは、「日米関係に詳しい」論客を集めて、内容を検討しているようであったが、多分に単眼的、局所的のように見受けた。今回の首相訪米の意義や日米関係の本質のところは、実際に日米関係に携わっている人から話を聞いたり、シンポジウムや討論会などの議論に参加しない限り、なかなか見えてこないように思われる。
そこで3回にわたって、ワシントン滞在中の見聞を踏まえて、日米関係の展望を、「中国」「安全保障」「環太平洋経済連携協定(TPP: Trans-Pacific Partnership)」という3つのキーワードに分けて考察したい。

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