安倍訪米後の「新時代」日米関係(上)中国にどう対応するか

執筆者:武内宏樹 2015年5月14日
エリア: 北米 アジア
4月27日、オバマ米大統領(左)と車中で歓談する訪米中の安倍晋三首相[ホワイトハウス提供](C)時事

 日米関係に地殻変動が起きた。筆者は4月28日から5月2日にかけて、安倍首相訪米に合わせて行われるシンポジウムや討論会に参加するためにワシントンに滞在した。ワシントンを訪れるのは今年2回目であったが、今ここで日米関係に携わっている関係者は独特の高揚感と緊張感に包まれているのを肌で感じた。長年日米関係に関わってきた人たちも異口同音に「日本がこれほど注目を集めたのはいつ以来か記憶にない」と語っていた。その意味で、安倍首相の弁を借りれば、 “Japan is back” である。
 翻って日本での報道を見てみると、米国、とくにワシントンの歓迎ぶり、安倍首相訪米に対する高い評価が現場どおりに伝わっていないように思われる。日本のメディア関係者は首相に付いて歩いているのであろうから、筆者が出席したようなシンポジウムや討論会にはまず参加していないであろう。
 安倍首相の米国議会での演説は、後でYouTube で見たり、リリースされた原稿を読んだりできるので、キャッチアップすることはできよう。日本国内のマスメディアは、「日米関係に詳しい」論客を集めて、内容を検討しているようであったが、多分に単眼的、局所的のように見受けた。今回の首相訪米の意義や日米関係の本質のところは、実際に日米関係に携わっている人から話を聞いたり、シンポジウムや討論会などの議論に参加しない限り、なかなか見えてこないように思われる。
 そこで3回にわたって、ワシントン滞在中の見聞を踏まえて、日米関係の展望を、「中国」「安全保障」「環太平洋経済連携協定(TPP: Trans-Pacific Partnership)」という3つのキーワードに分けて考察したい。

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執筆者プロフィール
武内宏樹(たけうちひろき) サザンメソジスト大学(SMU)政治学部准教授、同大学タワーセンター政治学研究所サン・アンド・スター日本・東アジアプログラム部長。1973年生れ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)博士課程修了、博士(政治学)。UCLA 政治学部講師、スタンフォード大学公共政策プログラム講師を経て、2008年よりSMUアシスタント・プロフェッサーを務め、2014年より現職。著書に『党国体制の現在―変容する社会と中国共産党の適応』(共編著、慶應義塾大学出版会、2012年)、Tax Reform in Rural China: Revenue, Resistance, Authoritarian Rule (ケンブリッジ大学出版会、2014年)。ほかに、International Relations of the Asia-Pacific、Japanese Journal of Political Science、Journal of Chinese Political Science、Journal of Contemporary China、Journal of East Asian Studies、Modern Chinaなどに英語論文を掲載。専門は、中国政治、日本政治、東アジアの国際関係及び政治経済学。
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