2015年5月29日(金)、「NHKニュースおはよう日本」で、「分かってきた縄文人のDNA」なる特集が放映された。1万数千年前から2千数百年前まで繁栄を誇った縄文人のDNAが日本人の体にはしっかり刻み込まれており、東アジアの人びとと日本人は外見こそよく似ているが、DNAを見比べると大きな差があるという内容だ。
古代史に興味ある人びとには、すでに広く知れ渡っていた学説だが、ようやく市民権を獲得したわけである。
日本民族バイカル湖畔起源説
これまでは、弥生時代の始まりとともに大陸や朝鮮半島から大量の渡来人(弥生人)が押し寄せ、先住民(縄文人)は圧倒され駆逐されたと信じられてきた。江上波夫の騎馬民族日本征服説が戦後の史学界を席巻してしまった時期もあった。さすがにこの推論を支持する学者はいなくなったが、「日本に与えた朝鮮半島の影響力を大きくみなすことこそが進歩的」という風潮は、つい最近まで残っていたように思う。しかしそういった「これまでの常識」は、もはや通用しなくなった。
まず、かつて盛んに唱えられていた日本人南方起源説が、否定された。人種の違いを識別できる「血液型Gm遺伝子」の分布から、日本人の先祖はロシアのバイカル湖から南下してきたことが判明したのだ。「日本民族バイカル湖畔起源説」である(松本秀雄『日本人は何処から来たか』NHKブックス)。さらに、DNA研究の進化によって、新人(ホモ・サピエンス)が15万年前にアフリカ大陸に生まれ、その後世界各地に散らばっていったことも証明された。
それだけではない。人類の祖は大きく3つのグループに分かれてアフリカを旅立ったが、その3つの遺伝子すべてが、日本列島にやってきたという。このような例は、世界中見渡しても稀で、ここに日本人の特徴が隠されているという。
さらに、父から息子につながっていくY染色体の研究が急速に進み、日本人のルーツ探しが一気に加速したのだ。ちなみに、Y染色体はA~Tの系統に分かれ、日本人に関わりの深かったのはDとOの系統だ。
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