話は、2015年の元旦にさかのぼる。パリからスペインの首都マドリードに向けて、アルジェリア系移民2世のフランス人兄弟モアメド・ベルシヌ(27)、メディ=サブリ・ベルシヌ(23)が相次いで移動した。その数日後にユダヤ教徒向けスーパー「イペール・カシェール」立てこもり事件を起こすことになるアメディ・クリバリと密接な関係を結んでいた男たちである。
最初に動いたのは弟メディ=サブリだった。元旦の1日、彼はパリ郊外に暮らす両親に暇乞いをした後、パリ・マドリード間の高速バスに乗った。「イスラム教を勉強するため、エジプトにしばらく滞在する」というのが理由だった。両親も、末弟も、その言葉を信じていた。

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