国連「事務総長選挙」に注目せよ(上)「密室」から「公開」へと脱皮

執筆者:鈴木一人 2016年5月13日
エリア: 北米 ヨーロッパ

 今年で2期10年の任期を終える潘基文国連事務総長の後任選びがだんだんと熱を帯びてきている。4月には国連史上初めてとなる、事務総長候補者による立会演説会が行われ、国連職員だけでなく、加盟国も次期事務総長となる人物の品定めに余念がない。国連事務総長は国連行政のトップであり、国連という組織の価値や役割を左右する重要な人物であり、同時に、国連財政に責任を負う立場でもある。そのため、国連職員からみれば、次期事務総長選挙は自分の組織のトップ人事というだけでなく、新事務総長の方針次第では自分のポストにも関わる問題である。
 そのため、国連事務総長選挙は常に国連組織の中では重要な話題になるのだが、今回はかつてなく議論が盛り上がっている。というのも、密室の中で決められていた事務総長選挙が、今回は立候補段階からその情報が公開され、透明性が確保されているからである。これまでは噂話やゴシップであった事務総長選挙が、一気に政策論議や人物評価の議論に転化しており、大変興味深い状況となっている。

カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
鈴木一人(すずきかずと) すずき・かずと 東京大学公共政策大学院教授 国際文化会館「地経学研究所(IOG)」所長。1970年生まれ。1995年立命館大学修士課程修了、2000年英国サセックス大学院博士課程修了。筑波大学助教授、北海道大学公共政策大学院教授を経て、2020年より現職。2013年12月から2015年7月まで国連安保理イラン制裁専門家パネルメンバーとして勤務。著書にPolicy Logics and Institutions of European Space Collaboration (Ashgate)、『宇宙開発と国際政治』(岩波書店、2012年サントリー学芸賞)、編・共著に『米中の経済安全保障戦略』『バイデンのアメリカ』『ウクライナ戦争と世界のゆくえ』『ウクライナ戦争と米中対立』など多数。
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