永住権「安売り」で外国人「高度人材」は集まるのか

執筆者:出井康博 2017年2月17日
エリア: アジア
《「高度人材」の永住促進》と伝える1月18日の朝日新聞1面

《「高度人材」の永住促進 法務省 最短1年で権利付与》
 1月18日、朝日新聞の朝刊1面にそんな見出しの記事が載った。
 安倍晋三首相は昨年、外国人高度人材の「永住権取得までの在留期間を世界最短とする(2016年4月19日の政府「産業競争力会議」)と宣言していた。その方針を受け、法務省が発表した政策について朝日は報じたのだ
 高度人材に対する「世界最短」の永住権付与は、安倍政権が進める成長戦略の一貫だ。外国人が日本で永住権を申請する場合、原則10年以上の在留期間が要る。その期間は高度人材に限って2012年から「5年」に短縮されているが、それをさらに縮め、わずか1年で永住権を与えるというのだ。
 法務省の発表を扱った記事は読売、毎日、日経、産経の全国紙すべてに載ったが、1面で扱ったのは朝日だけだった。朝日は〈獲得競争が激しくなっている外国人の人材を呼び込む狙い〉と、他紙にはない解説まで加えている。
 確かに、永住権につられて優秀な外国人が来日し、日本経済の成長に貢献してくれるなら結構なことだ。しかし、外国人の働く現場を長く取材している私には、そんなものは「絵に描いた餅」にしか映らない。

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執筆者プロフィール
出井康博(いでいやすひろ) 1965年、岡山県生れ。ジャーナリスト。早稲田大学政治経済学部卒。英字紙『日経ウィークリー』記者、米国黒人問題専門のシンクタンク「政治経済研究ジョイント・センター」(ワシントンDC)を経てフリーに。著書に、本サイト連載を大幅加筆した『ルポ ニッポン絶望工場」(講談社+α新書)、『長寿大国の虚構 外国人介護士の現場を追う』(新潮社)、『松下政経塾とは何か』(新潮新書)など。最新刊は『移民クライシス 偽装留学生、奴隷労働の最前線』(角川新書)
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