参院選「自公過半数割れ」後の野党に囁かれる明暗――「与党入り宣言」参政党と「解散しても勝てない」立憲民主党

執筆者:永田象山 2025年7月17日
タグ: 日本
「食料品の消費税ゼロ」と「日本人ファースト」を掲げて選挙を戦う立憲民主党と参政党だが、それぞれの選挙後の戦略とは?[立憲民主党HP(上)と参政党HP(下)より]
「運のいいことに、能登で地震」で自民党がさらに失速、与党過半数割れは一層現実味を増している。勢いに乗る参政党の神谷代表は「次の衆院選で与党入りを目指す」と宣言。一方、野党第一党である立憲民主党の野田代表にしてみれば、政権奪取の目算が立たないまま石破政権に倒れてもらっては困るというのが本音かもしれない。

鶴保庸介更迭までに4日の悠長

 今月20日に投開票を迎える第27回参議院選挙は後半戦に入った。

 参院選は17日間と衆院選と比べて期間が長いため、公示後の各党の幹部らの言動が結果に大きな影響を及ぼすことが多々ある。実際に今回の選挙戦でも眉をしかめざるを得ない舌禍事件が起こった。

「私たちは国土の均衡ある発展、均衡ある人口分散を、どうやったら維持できるのかということを考えました。二地域居住です……総務省は普通こういう時は立ちはだかって反対をするのです。しかし今回に至っては本当に協力的でした。むしろ率先してやってくれたと言ってもいい。

 また運のいいことに、能登で地震があったでしょ」(7月8日)

 参議院の予算委員長を務める自民党の鶴保庸介参院議員の問題発言だ。鶴保は和歌山市内での自民候補の応援に駆けつけ、自身が力を入れている都市と地域の「二地域居住」について説明する際、上記のように能登での地震を「運のいいこと」と発言して批判を浴び、翌日謝罪し発言を撤回した。しかし、その後も被災地石川県などからの批判は収まらず、選挙への悪影響を懸念する自民党はこの週末(12日)、鶴保を予算委員長から外すという事実上の更迭に踏み切った。

大敗した衆院選に続き、またもや森山幹事長の判断ミス

 筆者が鶴保の発言を聞いて真っ先に思い起こしたのは、2017年、今村雅弘復興大臣(当時)が東日本大震災について「東北で良かった」と発言したシーンだ。

 今村の発言を重く見た当時の安倍晋三総理は、発言から数時間後には大臣更迭を決断した。現場で取材していた筆者は、今村が所属する二階派の会長である二階俊博幹事長(当時)が、自分に事前に連絡がなかったとしてことのほか不機嫌であったことを記憶している。

 このように、閣僚や党幹部による被災地がらみの問題発言は世論の強い反発を買うことから、これまでの自民党は更迭などの対応を速やかに行ってきた。しかし、今回の鶴保の発言への対応を見ると、8日に問題の発言があり、9日に本人が発言の撤回と謝罪を行ったが、その間の党の対応は森山裕幹事長が「厳重注意」しただけだった。その後、野党だけでなく被災地の関係者からも抗議を受けるにおよび、ようやく重い腰を上げて委員長更迭を決めた。発言から更迭まで実に4日間もかけたことになる。石破政権の危機対応の脆弱さを物語る結果と言えよう。

「とにかく石破さんには危機対応の発想がない」(政界関係者)

 こういう意見は筆者もよく聞くが、石破をコントロールする“事実上の総理”と呼ばれる森山幹事長も、似たり寄ったりということだ。今回の対応を実質的に取り仕切ったのも森山だ。危機管理意識が研ぎ澄まされた人物であれば、遅くとも鶴保が謝罪会見をした9日には予算委員長を辞めさせ、被災地に謝罪に行かせるくらいの対応をするものだ。しかし全くその気配はなかった。

「森山さんも自分の地元選挙(参院鹿児島選挙区)が激戦で余裕が全くない」(自民関係者)

 と同情的な声もあるが、去年の衆院選でも裏金候補に2000万円を配る凡ミスを犯した。これが衆院での与党過半数割れの決定的要因となったと見られている。また同じ轍を踏んでしまったということだろう。

参政党・神谷代表「与党入りを目指す」発言の意味

「選挙後は政局になる」との見方は自民党内に広がっている。石破・森山と距離を置く非主流派の面々は、参院選で自民党が公明党と併せて50議席を獲得できなかった場合、おそらく「2万円の給付金」と「鶴保発言」への対応などを材料にして執行部を追及することになるのだろう。

 肝心の選挙情勢はどうか。選挙戦後半の各社の情勢調査を見る限り、与党過半数割れがさらに現実味を帯びてきたようだ。「台風の目」として自民党から保守層の票を奪うと目されている参政党は、依然勢いを保っている。知り合いの評論家がこんなことを筆者に漏らしていた。

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カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
永田象山(ながたしょうざん) 政治ジャーナリスト
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