ヨーロピアン・ラプソディ
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原田マハ『楽園のカンヴァス』仏語版を称賛したフランス人の「心象風景」

パリでの出版記念イベントで仏小説家ジェグレ氏(左)と対談する原田氏(中央)(C)伊熊泰子
日本人だとわかると、ヨーロッパの街で見ず知らずの人が話しかけてくることがある。昔だったらホンダ、トヨタや日産の車に乗っている、という話ばかりだったのに、最近、ハルキ・ムラカミ、ヨーコ・オガワ、ドリアン・スケガワなど、日本の小説の話をされることが、決して稀ではなくなった。しかもそうした日本文学の読み手は、とくに日本語学科を出たとか日本文化専攻という人々ではなく、たまたまフライトで隣り合わせたり、カフェでコーヒーをサーブしてくれたり、スーパーのレジ待ちで並んでいた、ごく普通の「本好き」である。卓越した翻訳者の橋渡しで、文化的バックグラウンドの異なる本好きと、日本の小説世界を共有できるのは楽しい。

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