新春特別ビッグ対談【川淵三郎&青木功】(上)ゴルフ界を改革せねば!

執筆者:フォーサイト編集部 2019年1月3日
カテゴリ: 国際 スポーツ
エリア: 北米 日本
プライベートでも親しく交流があるため、談笑の中にも歯に絹着せぬ指摘が飛び出した(C)KUNIO TAMURA(以下同)

 

 日本初のプロサッカー「Jリーグ」を立ち上げ、初代チェアマンから日本サッカー協会(JFA)会長も歴任した川淵三郎氏(82)。かたや、ゴルフ界のレジェンドとして数々の記録を打ち立てて日本男子初の「世界ゴルフ殿堂」入りも果たし、2016年から日本ゴルフツアー機構(JGTO)会長を務める青木功プロ(76)。その「キャプテン」と「世界のアオキ」は、実はゴルフを通じて以前から交流があるばかりか、様々な局面で青木会長が川淵キャプテンに相談をする間柄でもある。

 そんな両氏に、新しい年2019年を迎えて、「組織の改革」というテーマで大いに語り合っていただいた。まずはその前編――。

若手選手の危機感

川淵三郎:昨年2018年は、年末に大きな明るいニュースが飛び込んできましたね。米PGAツアーとの共催試合の日本初開催。

青木功:はい。10月に開催する「ZOZO CHAMPIONSHIP(ゾゾチャンピオンシップ)」ですね。賞金総額は国内史上最高の約11億円、優勝賞金も約2億円です。

川淵:何と言っても、米PGAツアーの世界トッププロがみんな日本に来て、それを間近で見られるんだからね。

青木:たまたまいまの米PGAツアーの責任者と僕が知り合いだったので話がしやすくて、去年の1月ごろから協議を進めていたんです。僕自身にとっても世界最高峰の米PGAツアーを日本で開催することが夢の1つでしたから。

川淵:もちろん、日本の選手も何人か出場できるんでしょう?

青木:はい、13人の出場枠があります。

川淵:楽しみですね。これ、ほんと大きな改革ですね。

青木:川淵キャプテンには以前から組織の改革という点でいろいろとアドバイスをいただいていますが、何とか1つずつ進んでいけてるかなとは思っています。

川淵:やっぱり青木さんがJGTO(日本ゴルフツアー機構)会長になって、選手たち自身も、変わりたい、変わらなくちゃと考え始めてきた。ただ、僕も若手のプロたちと何回かゴルフをする機会があったのだけど、彼らは、レギュラーツアーの中のベテラン選手らに対して、ある種の不満感を持っているようです。自分たちはスポンサーやギャラリーに対してもっとサービスをしたい気持ちがあるのだけど、ベテランたちがその雰囲気を壊しちゃう面があるとね。

青木:そういう面では、まだ選手の意識改革もやっていかなきゃだめですね。

「危機感を共有できなければダメです」

川淵:もちろん、改革といったって一気呵成にできるものではない。ただね、青木さんも選手の立場から会長という立場に変わって、言うことも変わってきていると思うし言わなきゃならないことが多くなっていると思う。そういうことについて外野でいろいろ言われることもあるとは思いますが、そこはもう割り切って、自分のやりたいようにやられるのが一番いいと思う。現にそうやっておられるから着実に結果も出ていると思いますよ。要は、スポンサーもつかない人気も出てこないという現状の危機感をゴルフ界を挙げて共有し、変わっていかなきゃね。その点、若手が危機感を持ってるというのはすごくいいことだと思う。

青木:昨季からは遼(石川遼選手、27歳)が選手会長になって、JGTOの副会長にもなってもらって、選手たちと一体になって思う存分やれ、そのあとの最後の責任はおれが取るからって言って、いろんな取り組みをやっています。

川淵:青木さんも会見で言っておられたけど、石川くんは年齢的には孫と一緒のようなもの。孫たちの世代の選手を厳しくも温かく見守って、という感じもいいと思いますよ。

青木:そうですね。

川淵:たとえば、トーナメントでのプロたちのギャラリーへのサインの仕方をどうするかという点1つとっても、米PGAツアーとでは大きな違いがある。それを石川くんなどはアメリカ経験もあるから知っているし、先駆者である青木さんもそう。そういうところからも、日本のゴルフ界を変えていかなきゃいけないと思います。

プロは魅せて見られて勝ってナンボ

青木:はい、そう思って少しずつ変えようと思ってやっています。やはり、なかなか一気呵成にはいかないもので。

川淵:そう、一気呵成には無理。短期、中期、長期でそれぞれ期限をつけた具体的な目標を立ててやったほうがいいと思いますね。短兵急にやってもうまくいきません。

青木:自分なりの目標はあるんです。ただ、それを口に出すとき、何年後という点で、それは早すぎるとかそれは長すぎるとか、いろいろ意見も出てきますからね。そのあたりの加減というか塩梅がなかなか難しい。そういう部分でも、ぜひキャプテンのアドバイスを今後もいただきたいと思っているんです。日本のサッカー界を変えていったときも、様々な決断を迫られたり難しい判断をしなければならない局面がいっぱいあったと思います。

川淵:Jリーグを立ち上げる前は、日本はアジアの中でもサッカー弱小国だった。プロ化しない限りは日本のサッカーは発展しないということは分かっていた。分かっていたけど、じゃあプロ化したら成功するのかという保証は何もない。ないけれど、これを強行突破しなければもう本当に日本サッカーに明日はないという状況だったのです。それで、当時はアジアの中でもマレーシアが一番プロ化に向けて進んでいた。すぐに現地に行って取り組みなどを勉強し、進めていったんです。

青木:なるほど。

川淵:最初に、これまでの日本にない「地域に根ざしたスポーツクラブづくり」という理念を掲げて、それを説いてまわった。それがなかなか理解してもらえず、とりわけ渡邉恒雄さん(読売新聞グループ本社主筆)との論争は、Jリーグが立ち上がってからもしばらく続いて、それ自体がマスコミでも取り上げられるほどでした。でも、それは渡邉さんが異端者だったのではなくて、当時はむしろ僕らの方が異端児。日本全国、ほんとに最初は「地域に根ざす」という理念が誰からも理解されませんでしたから。それを議論しながら説得していったのですが、そういう時に重要なのは、抽象的な説明ではだめで、こうやればこういうことがある、その時はこうやるんだ、そうすればこうなるんだと、常に具体的な例を挙げて説くことです。

青木:確かに、具体的なケースで話すことは大事ですね。

「プロというのは魅せて見られてナンボ、勝ってナンボです」

川淵:当時いちばん言われたのは、アマチュアをプロにしたからっていきなりうまくなるのか、強くなるのか、ということでした。それについては、僕がヨーロッパに行って勉強したことを話した。向こうのクラブでは、ユースの子供たちに対する養成・育成システムがちゃんと整っているわけです。それで20~30人くらいが練習しているところを見ると、みんな必死なんです。だって、彼らの中からプロになれるのはほんの1人か2人。だから、本当に真剣に練習する。とにかく、ひたすら走る。50メートルダッシュなど、見ている僕らにも必死の真剣さが伝わってくる。速く走れるようになりたいし、認めてももらいたい。だから、コーチが一生懸命やれって言わなくても、みんな必死に練習する。対して、たとえば僕が日本代表の監督をしていた時、選手たちにどう言ってたと思います?「ばかやろう、走れ! 最後までしっかり走らんか! 途中で息抜くな!」って怒ってばかりでしたよ。と言うのも、やはり彼らはアマチュアだから、言ってみればできるだけサボりたいという気持ちがある。だからこっちが言わなきゃならなかった。それがプロになると、周りの見る目も変わるし、練習環境も変わる。活躍すれば収入も増えるし人気も出る。いろんな意味で、練習してうまくなることがいかに自分のプラスになるかが分かる。だから練習への意欲も変わり、50メートルダッシュだけじゃなくシュート練習、ボールコントロール練習もアマチュアのときとはありとあらゆる取り組み方が変わりますよ、アマからプロになるってそういうことですよ、という具合に具体例をあげて説得していったんです。それと、失敗したらどうなるってことは全く考えなかったですね。確かに、僕も会社(古河電工)を辞めて背水の陣で打ち込んでいましたが、だからこそ、絶対に成功してやるということしか考えなかったです。

青木:そういうお話を聞いていると、僕なんかまだまだ全然足りませんね。JGTOの会長になって2期目、まもなく満3年になりますが、僕がこうやりたいという改革の意識が選手たちにも多少は通じてきた実感はあります。でも、多少じゃまだだめなんですね。プロというのは魅せて見られてナンボ、勝ってナンボ、という意識をもっと選手たちに植えつけていかねばなと思い直しました。

川淵:ただね、僕と青木さんでは、その時の立場というか状況が違います。青木さんの場合は、ゴルフというプロの世界がもう何十年かにわたって作り上げられてきた中で会長として改革をしなければならない。僕の場合、プロの世界がまだなくて、これから新しいことをゼロから始める状況だった。もちろん新しいことが何でも成功するわけではないけれども、まだ僕の方がやりやすい状況ではあったと思います。長年続いてきた組織、世界をいきなり180度くらい変えるというのは、やはり並大抵のことではないですよ。

青木:そうですね。いまから新しいスタート、ってやれればいいんですが、ずっと続いてやってきているわけですから、そこが難しい。とにかく、自分が考えていることを具体的な例をあげて口に出し、みんなと相談していけばいいんですかね。

川淵:そうそう。そして繰り返しますが、短期中期長期で、目標も具体的にね。

青木:ですね。ちょうど2018年の後半あたりからいい感触になってきているので、それを今年、そして来年以降にもつなげていきたいです。

川淵:前に青木さんも言っておられたけど、周りにどう言われようと自分がベストと思っていることを腹を据えてやりますって。そういうことだと思います。腹も腰も据えて、10年くらいじっくりやられたらいいじゃないですか。そのくらいの気持ちでね。辞めるのは、いつだって辞められますから。

青木:そうですよね。

川淵:僕なんかも、この歳になると別に自分の損得は関係なくスポーツ界のために力になることは何でもやろうという意識になっています。青木さんも、そろそろそういう年齢でしょう。世のため人のためというか、自分の欲ではないから、逆に若手にもいい助言、アドバイスができるんですよ。

青木:キャプテンのお話をお聞きしていると、何か今年また1つ飛躍できそうな気がしてきました。

米ツアーより大きかった日本の賞金

川淵:それにしても昨年後半のゴルフ界、本当に勝負そのものがおもしろかったですね。テレビで観ていてもすごく楽しめた。最後の最後まで勝負が分からない、プレーオフまでもつれこむ、ベテランだけじゃなく若手も優勝に絡んで勝負が白熱するという、見ていて実に楽しい試合が多かったです。だからこそ思うのだけど、やはり残念なのは、あ、今週もテレビ中継ないのか、試合ないのかってこと。試合数が少なくなりましたね。ただ、ちょっと驚いたのは、以前に青木さんがどこかで話しておられたか書いておられたか、優勝賞金の総額はそんなに減っていないんですね。これはすごく意外だった。

「かつては賞金額も日本の方が大きかったんです」

青木:はい、賞金の額で言えば、実は1990年代は世界でも日本が一番大きかったんです。アメリカツアーよりも大きかったんですよ。それが、タイガー・ウッズが出てきて大ブームになって、米PGAツアーもそれからですよ、ここまで大きくなったのは。

川淵:なるほど、じゃあ日本もまだこれからそういう可能性はなくはないわけですね、スターが出てきたら。

青木:そうです。そういう意味では、遼に続け松山(英樹)に続けと、どんどん若いスターが出てくるようになればいいですね。実際、いまいろんな若い選手が出てきていますから、そういう若手をうまく育てて世間にもアピールして、あいつがこの試合に出てきたらどんなプレーを見せてくれるんだろうというような、期待や興味を持たせるような選手を育てたいですね。

川淵:そういう若手のスターや、去年後半のような最後まで競り合う試合、そういうのが増えてくると、ファンも増えないわけないよね。

青木:そうですね、そういう意味では、我々のほうが来てください試合見てくださいって言わなくても、見たくなるようなおもしろい試合ができるような選手、環境をつくっていかなければだめですね。(つづく)

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執筆者プロフィール
フォーサイト編集部 フォーサイト編集部です。電子書籍元年とも言われるメディアの激変期に、ウェブメディアとしてスタートすることになりました。 ウェブの世界には、速報性、双方向性など、紙媒体とは違った可能性があり、技術革新とともにその可能性はさらに広がっていくでしょう。 会員の皆様のご意見をお聞きし、お力をお借りしながら、新しいメディアの形を模索していきたいと考えております。 ご意見・ご要望は「お問い合わせフォーム」や編集部ブログ、Twitterなどで常に受け付けております。 お気軽に声をお聞かせください。よろしくお願いいたします。
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