「壁崩壊30年」でも成し遂げられない東西ドイツ「心の統一」(上)

執筆者:熊谷徹 2019年11月19日
エリア: ヨーロッパ
ベルリンの壁をハンマーで叩くベルリン市民たち (1989年11月、筆者撮影・以下同)

 

 ベルリンの壁が崩壊してから30年目の11月9日、ドイツ各地で記念式典が催された。しかし、この日の式典や報道には、手放しの喜びや祝賀気分が感じられなかった。ドイツでは壁崩壊から30年経ったにもかかわらず、東西の市民の間でアイデンティティの亀裂が深まっているからだ。経済格差は縮まったが、真の統一は完遂されていない。

深い傷の醜悪な瘡蓋

 フランク・ヴァルター・シュタインマイヤードイツ連邦大統領は、ベルリンのブランデンブルク門の前での記念式典で、

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執筆者プロフィール
熊谷徹(くまがいとおる) 1959(昭和34)年東京都生まれ。ドイツ在住。早稲田大学政経学部卒業後、NHKに入局。ワシントン特派員を経て1990年、フリーに。以来ドイツから欧州の政治、経済、安全保障問題を中心に取材を行う。『イスラエルがすごい マネーを呼ぶイノベーション大国』(新潮新書)、『ドイツ人はなぜ年290万円でも生活が「豊か」なのか』(青春出版社)など著書多数。近著に『欧州分裂クライシス ポピュリズム革命はどこへ向かうか 』(NHK出版新書)、『パンデミックが露わにした「国のかたち」 欧州コロナ150日間の攻防』 (NHK出版新書)、『ドイツ人はなぜ、毎日出社しなくても世界一成果を出せるのか 』(SB新書)がある。
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