【ブックハンティング・エクストラ】 「イスラムの海賊」に挑んだ塩野七生のただならぬ冒険

『ローマ亡き後の地中海世界』(上・下)塩野七生著(新潮社刊。上巻は発売中。下巻は1月30日発売) 作家・塩野七生は冒険家である。学者が決して手を出さない、いや手を出せない歴史の領域に果敢に挑み、研ぎ澄まされた現代感覚で、歴史の鼓動に耳を傾ける。古代、中世、近世の歴史空間を縦横無尽に遊泳し、文明史と人類史のドラマを次々と発見していく。それは、歴史の空白を埋める途方もない作業に取り組んでいるようにも見える。イタリアで封印されてきた膨大な古文書を永い眠りから覚醒させ、荘厳なキリスト教会の壁画に目を凝らし、強烈な太陽の光を浴びる中世の遺跡に問いかけることで、中世を現代に引き戻す冒険の航海に出た――それが本書『ローマ亡き後の地中海世界』である。

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執筆者プロフィール
竹田いさみ(たけだいさみ) 獨協大学外国語学部教授。1952年生れ。上智大学大学院国際関係論専攻修了。シドニー大学・ロンドン大学留学。Ph.D.(国際政治史)取得。著書に『移民・難民・援助の政治学』(勁草書房、アジア・太平洋賞受賞)、『物語 オーストラリアの歴史』(中公新書)、『国際テロネットワーク』(講談社現代新書)、『世界史をつくった海賊』(ちくま新書)、『世界を動かす海賊』(ちくま新書)など。
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