80時間世界一周 (55)

面白うてやがて悲しき上海「春節」の花火

執筆者:竹田いさみ 2009年3月号
タグ: 中国 日本
エリア: アジア

 中国の大晦日は賑やかだとは聞いていたが、これほどとは思っていなかった。上海市内で打ち上げられた数万発の花火の連続音と、道路を占拠した数百万発の爆竹が躍る音は、まさに「驚天動地」であった。日本や欧米と異なり、中華圏は旧暦を採用しているため、新年を旧正月で祝う。二〇〇九年は一月二十五日が旧暦の大晦日で、二十六日が元旦(春節)にあたる。 目抜き通りの延安路を遠くに見下ろせるホテルに陣取って、大晦日の夜景を堪能した。数日前から景気づけの花火が散発的に打ち上げられていたが、ほんの序曲に過ぎない。大晦日には夕方から花火のショーが徐々にはじまり、午後十一時からの一時間にクライマックスを迎える。夜空は硝煙で曇り、破裂音で会話もできないほどだ。この時期になると花火・爆竹の特需を当て込んで、市内各地に臨時の花火屋がオープンする。爆竹は一千発単位で売られており、値段は四十五元(約六百円)。花火や爆竹で死傷者が続出するため、楽しめる場所が限定されてきたとはいえ、当局もこの大晦日の狂騒には目をつぶる。

カテゴリ: 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
竹田いさみ(たけだいさみ) 獨協大学外国語学部教授。1952年生れ。上智大学大学院国際関係論専攻修了。シドニー大学・ロンドン大学留学。Ph.D.(国際政治史)取得。著書に『移民・難民・援助の政治学』(勁草書房、アジア・太平洋賞受賞)、『物語 オーストラリアの歴史』(中公新書)、『国際テロネットワーク』(講談社現代新書)、『世界史をつくった海賊』(ちくま新書)、『世界を動かす海賊』(ちくま新書)など。
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