「中国優先」米バイデン政権がロシアに送る「戦略的シグナル」

執筆者:畔蒜泰助 2021年6月1日
エリア: 北米 ヨーロッパ
大きな戦略的利害の相違も存在するが ©︎AFP=時事
バイデン政権下の米露関係には、ナワリヌイ氏問題やロシアによる米大統領選への介入、米政府機関へのサイバー攻撃などを巡って制裁の応酬に発展するなど、緊張関係をはらむ展開が目立っている。しかし対中問題が第一の課題となる中で、ロシアとは安定的で予測可能な関係を構築したいというシグナルが常に発信されているのも見逃せない。6月16日に開かれることになった米露首脳会談の背景を分析する。

   バイデン政権発足後、初めての対面での米露首脳会談が2021年6月16日にジュネーブで開催されることは決まった。ジョー・バイデン大統領は4月13日、政権発足直後の1月26日に続くウラジーミル・プーチン大統領との二回目の首脳電話会談において、数カ月以内に第三国での対面での首脳会談の開催を提案していた。その具体的な日時と場所については、バイデン大統領が6月11~13日にG7サミット、6月14日に北大西洋条約機構(NATO)首脳会談、米・欧州連合(EU)首脳会談に出席のため英国とベルギーを訪問予定であることから、6月15~16日に欧州の第三国で行われる可能性が指摘されており、実際にその通りとなった。ただ当初、プーチン政権側はこのバイデン提案の受け入れには慎重な態度を取り、米露首脳会談の開催は必ずしもスムーズに決定した訳ではなかった。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
畔蒜泰助(あびるたいすけ) 1969年生まれ。笹川平和財団主任研究員。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、モスクワ国立国際関係大学修士課程修了。東京財団研究員、国際協力銀行モスクワ事務所上席駐在員を経て現職。専門はユーラシア地政学、ロシア外交安全保障政策、日露関係。著書に『「今のロシア」がわかる本』(三笠書房・知的生き方文庫)、『原発とレアアース』(共著、日経プレミアムシリーズ)。監訳本に『プーチンの世界』(新潮社)がある。
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