トルコ「エルドアン神話」の崩壊

執筆者:間寧 2021年6月17日
タグ: トルコ
エリア: 中東
ポスト・エルドアン時代の到来か(C)AFP=時事
トルコには「エルドアン神話」がある。選挙ではあらゆる手を尽くして勝つというものである。これはレジェップ・タイイップ・エルドアン体制を支える大きな要因だった。しかしこの神話が崩壊しつつある。

 

 最近のほぼすべての世論調査では与野党の支持率が逆転しているだけでなく、人々の選挙結果予想でも野党有力候補に対してエルドアンが負けるとの回答が多数派を占めている。これはより重要なことである。

 現大統領・議会の任期は2023年6月であるが、与党が憲法解釈上の理由で次期選挙を繰り上げる可能性もある。

 本稿では、エルドアン神話の崩壊の原因と今後の影響を論じた上で、野党の戦略を展望する。

3名の仮想ライバルに敗北

 トルコでは、2002年以来の与党である「公正発展党(AKP)」が、その後のすべての総選挙と統一地方選挙で第1党となり、集権的大統領制へ移行した後の2018年大統領・議会選挙では、「民族主義者行動党(MHP)」との選挙連合で勝利している。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
間寧(はざまやすし) はざま・やすし JETROアジア経済研究所地域研究センター中東研究グループ長。博士(政治学)。最近の著書に『トルコ シリーズ・中東政治研究の最前線1』(編著、ミネルヴァ書房、2019年)、『後退する民主主義・強化される権威主義――最良の政治制度とは何か』(第四章「外圧の消滅と内圧への反発:トルコにおける民主主義の後退」、ミネルヴァ書房、2018年)、"Economic and corruption voting in a predominant party system: The case of Turkey,"(Acta Politica, 53(1), January 2018)
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