2021年版「台湾国防白書」を読み解く

執筆者:伊藤俊幸 2021年12月24日
エリア: アジア
中国による「グレーゾーンの脅威」を表す図(台湾の国防報告書より)
12月1日、台湾のシンクタンクが主催した講演会において、安倍晋三元総理大臣が「台湾有事は日本有事である」と発言。これに中国が猛反発するなど、国際社会では台湾問題をめぐる関心がますます高まっている。では、当の台湾当局は「台湾有事」についていかなる認識を持ち、どのように備えているのか。今秋改定された台湾の国防白書を、元自衛隊高級幹部が読み解く。

 

台湾国防の基本は「抑止」と「自立」

 11月9日、台湾の国防部が新しい国防報告書(国防白書)を発表した。台湾の国防白書は2年ごとに改訂されるため、2019年以来の改訂ということになる。すでに日本の新聞等でも概要は報じられているが、本稿ではより詳細にその内容を読み込みながら、台湾の現時点での国防戦略を概観したい。

 筆者がまず着目したのは白書の〈前書き〉である。日本で言えば防衛大臣にあたる国防部部長邱國正の署名が付された〈前書き〉の冒頭には、「台湾の中華民国の国防とは、戦争を予防することを目的とする総力防衛である」(以下、太字は白書からの抜粋、筆者訳)という一文がある。なぜ国家は軍隊を持ち、国防をする必要があるのか、というその根本的な目的が述べられているのだ。当たり前のことを書いていると思われるかもしれないが、少なくとも筆者はこの一文に感心した。なぜなら日本の防衛白書の岸信夫防衛大臣名で書かれた〈刊行に寄せて〉という前書き部分には、現在の情勢と「わが国の領土・領海・領空を守り抜く」としか書かれていないからだ。

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カテゴリ: 政治 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
伊藤俊幸 元海将、金沢工業大学虎ノ門大学院教授、日本戦略研究フォーラム政策提言委員、日本安全保障・危機管理学会理事。1958年生まれ。防衛大学校機械工学科卒業、筑波大学大学院地域研究科修了。潜水艦はやしお艦長、在米国防衛駐在官、第二潜水隊司令、海幕広報室長、海幕情報課長、情報本部情報官、海幕指揮通信情報部長、第二術科学校長、統合幕僚学校長を経て、海上自衛隊呉地方総監を最後に2015年8月退官。
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