「価値観」一本槍外交では中ロを結束に走らせてしまう

執筆者:宮本雄二 2021年12月27日
タグ: ロシア 中国
エリア: アジア ヨーロッパ
ロシアは中国の従属国家になる恐れを抱く ⓒAFP=時事
互いを「外交カード」として利用し合う中国とロシアだが、その関係には常に警戒と対立が潜んでいる。「対欧米」が目的の結束に対し、イデオロギーや価値観を全面的に掲げるのは弊害も大きい。この強権連合の隠れた亀裂を視野に入れ、個々の事案を切り離した丁寧な対応が望まれる。

 米国、中国、ロシアをめぐる動きも慌ただしい。11月16日にバイデン・習近平、12月7日にバイデン・プーチン、15日には習近平・プーチンが、それぞれオンライン会談を行っている。

 ウクライナ情勢は、ロシアに対する欧米の姿勢を硬化させ、台湾問題をはじめとして厳しさを増す米中関係は、中国と先進民主主義諸国との関係をも緊張させている。こういう構図になると、中国とロシアは当然、近づく。外交とはそういうものであり、中国とロシアは欧米諸国との関係において、お互いに「外交カード」として利用し合っているということになる。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
宮本雄二(みやもとゆうじ) 宮本アジア研究所代表、元駐中国特命全権大使。1946年福岡県生まれ。69年京都大学法学部卒業後、外務省入省。78年国際連合日本政府代表部一等書記官、81年在中華人民共和国日本国大使館一等書記官、83年欧亜局ソヴィエト連邦課首席事務官、85年国際連合局軍縮課長、87年大臣官房外務大臣秘書官。89 年情報調査局企画課長、90年アジア局中国課長、91年英国国際戦略問題研究所(IISS)研究員、92年外務省研修所副所長、94年在アトランタ日本国総領事館総領事。97年在中華人民共和国日本国大使館特命全権公使、2001年軍備管理・科学審議官(大使)、02年在ミャンマー連邦日本国大使館特命全権大使、04年特命全権大使(沖縄担当)、2006年在中華人民共和国日本国大使館特命全権大使。2010年退官。現在、宮本アジア研究所代表、日本アジア共同体文化協力機構(JACCCO)理事長、日中友好会館会長代行。著書に『これから、中国とどう付き合うか』『激変ミャンマーを読み解く』『習近平の中国』『強硬外交を反省する中国』『日中の失敗の本質 新時代の中国との付き合い方』『2035年の中国―習近平路線は生き残るか―』などがある。
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