「国境産業」日本漁業の危機――「東シナ海」で何が起こっているのか

執筆者:佐々木貴文 2021年12月30日
タグ: 紛争
エリア: アジア
東シナ海で操業する中国漁船(写真提供:筆者)
日本の漁業に「領土・領海問題」が暗い影を落としている。尖閣諸島の漁場が「軍事化」する中、日本は日中漁業協定によって手足を縛られた状態が続く。「国境産業」としての漁業には、もはや国家の保護が不可欠だ。

生産量は最盛期の3分の1

 日本漁業は断崖絶壁に立たされている。かつては輸出産業として光り輝き、日本経済を力強く支えてきた日本漁業だが、今や見る影もない。南氷洋捕鯨などで鳴らした大洋漁業が経営したプロ野球球団、大洋ホエールズも、いつの間にかインターネット関連企業がオーナーとなった。

 海面漁業生産量は、イワシの豊漁というアシストがあり、1984年に1282万トンに達するものの、その後は低迷。2019年には414万トンにまで縮小し、最盛期の3分の1での低空飛行を続ける。しかも、この生産量には養殖業によるものが含まれており、漁撈船による漁獲は320万トンレベル(2019年)にまで落ち込んでいる。

この記事だけをYahoo!ニュースで読む>>
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
佐々木貴文(ささきたかふみ) 漁業経済学者。1979年、三重県津市生まれ。2006年北海道大学大学院教育学研究科博士後期課程修了。鹿児島大学大学院水産学研究科准教授を経て、現在、北海道大学大学院水産科学研究院准教授。農林水産省 水産政策審議会委員。専門は近代産業史・漁業経済学・職業教育学。著作に『近代日本の水産教育──「国境」に立つ漁業者の養成』(北海道大学出版会、2018年、漁業経済学会賞)、『漁業と国境』(共著、みすず書房、2020年)、『東シナ海 漁民たちの国境紛争』(KADOKAWA、2021年)。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top