ウクライナ危機と連鎖のリスク「今世紀最初の食糧危機」

執筆者:後藤康浩 2022年3月9日
エリア: ヨーロッパ
プーチン政権は小麦を原油・天然ガスと並ぶ外貨獲得の柱に据えることに成功した(ロストフ州の農村を視察するプーチン氏=2015年) (C)AFP=時事
ロシア、ウクライナの小麦輸出のほぼすべてが、中東、アフリカに向けられている。軍事衝突で供給が途絶え、価格高騰が続いて行けば、この地域の政情不安にもつながりかねない。またロシア、ベラルーシは肥料原料となるカリ鉱石の大輸出国でもあり、「肥料危機経由の食糧危機」というシナリオも懸念される。

 ロシアのウクライナ侵攻は原油、天然ガスから小麦、トウモロコシまで幅広い一次産品の価格高騰として世界経済を襲っている。ウクライナ危機が今後、数カ月以上長期化した場合、今年後半から世界とりわけ途上国は価格高騰だけでなく、食料不足に見舞われる恐れがある。ロシア、ウクライナが小麦、トウモロコシの大輸出国であることはよく知られているが、軍事衝突の舞台や後方地域がその基盤となる世界的な穀倉地帯であり、農地、出荷インフラがダメージを受ければ、輸出量が大きく落ち込むリスクがあるからだ。加えて、農業生産を支える化学肥料の3大要素のうち、カリはロシア、ベラルーシが世界輸出の40%を占める。カリ供給が止まれば、世界は化学肥料の不足と施肥量減少による農業生産の落ち込みに直撃されるだろう。ウクライナ侵攻は今世紀に入って最初の食糧危機に向かいつつある。

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執筆者プロフィール
後藤康浩 亜細亜大学都市創造学部教授、元日本経済新聞論説委員・編集委員。 1958年福岡県生まれ。早稲田大政経学部卒、豪ボンド大MBA修了。1984年日経新聞入社。社会部、国際部、バーレーン支局、欧州総局(ロンドン)駐在、東京本社産業部、中国総局(北京)駐在などを経て、産業部編集委員、論説委員、アジア部長、編集委員などを歴任。2016年4月から現職。産業政策、モノづくり、アジア経済、資源エネルギー問題などを専門とし、大学で教鞭を執る傍ら、テレビ東京系列『未来世紀ジパング』などにも出演していた。現在も幅広いメディアで講演や執筆活動を行うほか、企業の社外取締役なども務めている。著書に『アジア都市の成長戦略』(2018年度「岡倉天心記念賞」受賞/慶應義塾大学出版会)、『ネクスト・アジア』(日本経済新聞出版)、『資源・食糧・エネルギーが変える世界』(日本経済新聞出版)、『アジア力』(日本経済新聞出版)、『強い工場』(日経BP)、『勝つ工場』(日本経済新聞出版)などがある。
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