ブラジル「政治のタブー」となった中絶論争

執筆者:奥田若菜 2023年2月14日
タグ: ブラジル
エリア: 中南米
アルゼンチンから始まった中絶擁護の「緑の波」運動はブラジルにも波及するか(C)AFP=時事
「中絶容認」へ舵を切る国が増えている中南米にあって、事情が異なるのがブラジルだ。ルーラ新大統領は中絶に反対するジュネーブ合意宣言からの離脱を表明したものの、それを以て「中絶容認」と捉えるのは早計だという。政治家にタブー視されるブラジルの中絶問題の深層――。

 

 人工妊娠中絶を厳しく制限する国々が多い中南米では近年、中絶容認へと舵を切る動きがある。しかしブラジルは現在も、特定のケースを除いて中絶が法律で禁じられている。保守派が支持したジャイール・ボルソナロ前大統領の退陣後、中道左派のルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァ新大統領は中絶に反対するジュネーブ合意宣言からの離脱を表明した。中絶の非刑罰化を訴えてきた女性権利団体はルーラ政権下での中絶議論の進展を期待するものの、中南米各国のような転換が起こるとは考えにくい。

カテゴリ: 政治 社会
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執筆者プロフィール
奥田若菜(おくだわかな) 神田外語大学准教授。専門は文化人類学、ブラジル研究。研究テーマは貧困、社会格差など。大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程単位取得退学。ブラジリア大学人類学部研究員や日本学術振興会特別研究員などを経て、現職。著書に『貧困と連帯の人類学:ブラジルの路上市場における一方的贈与』(春風社、2017)、『格差社会考 ブラジルの貧困問題から考える公正な社会』(神田外語大学出版局/2021年)がある。
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