習近平3期目:党中央弁公庁主任人事と軍工派躍進が示す「仲介外交」「科学技術の自立自強」への焦燥

執筆者:城山英巳 2023年3月29日
タグ: 中国 習近平
エリア: アジア
党中央弁公庁主任に就任した蔡奇=前段中央(C) AFP=時事
3月の全人代を経て習近平3期目の体制が整った。地方勤務時代の元部下で脇を固め、そのうちの1人である政治局常務委員の蔡奇を党中央弁公庁主任に据え、「軍工派」と呼ばれる軍系テクノクラートを昇格させた。「仲介外交」と「科学技術の自立自強」への意欲の表れといえるが、一方で今回行われた機構改革からは政権のアキレス腱も垣間見える。

 

 中国の習近平国家主席は3月20日~22日、ロシアを公式訪問した。「和平の旅」と位置付けた習近平は、ウラジーミル・プーチン大統領と並んだ共同記者発表で、「積極勧和促談」(積極的に和平を勧め、対話を促す)と呼び掛けた。先に、7年間にわたり断交状態にあった中東の大国、サウジアラビアとイランの外交関係正常化を仲介した習近平が狙うのは、プーチンが提案を聞こうが聞くまいが、「中立の仲介者」を演じ切ることだ。米、中露のどちらとも距離を置く「グローバルサウス」(南半球を中心とする新興国・途上国)を取り込み、国際社会を「米欧日など民主主義陣営VS中国を盟主とするグローバルサウス」という構図に塗り替えることだ。

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カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
城山英巳(しろやまひでみ) 北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院教授。1969年生まれ。慶應義塾大学文学部卒業後、時事通信社に入社。中国総局(北京)特派員として中国での現地取材は十年に及ぶ。2020年に早稲田大学大学院社会科学研究科博士後期課程修了、博士(社会科学)。2010年に『中国共産党「天皇工作」秘録』(文春新書)でアジア・太平洋賞特別賞、2014年に中国外交文書を使った戦後日中関係に関する調査報道のスクープでボーン・上田記念国際記者賞を受賞。著書に『中国臓器市場』(新潮社)、『中国 消し去られた記録』(白水社)、『マオとミカド』(同)、『天安門ファイル-極秘記録から読み解く日本外交の「失敗」』(中央公論新社)、『日中百年戦争』(文春新書)などがある。
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