政治的なるものとは~思索のための1冊 (10)

「戦略的リアリスト」の面目躍如――『安倍晋三 回顧録』の歴史的な意味(後編その1)

執筆者:橋本五郎 2023年5月28日
タグ: 安倍晋三
エリア: アジア 北米 その他
2013年2月、オバマ氏との一対一の会談で安倍氏は3つの「切り札」を切った (C)AFP=時事
故・安倍晋三元首相はタカ派の「ナショナリスト(国家主義者)」と言われたが、同時に「インターナショナリスト(国際主義者)」でもあった。内政と外交を縦横無尽に連携させ、戦略的な利益を追求した。一方で、自らの信念に照らして譲れない一線については、あくまで原則を貫く「原理的外交」も辞さなかった。

 

 政治家の回顧録に避けられないのは、自己正当化であり、美化である。このことはいくら強調しても強調しすぎることはない。その一方、自らの内心を吐露しようとするがゆえに、否応なくその人間の本質が現れてくるものである。『安倍晋三 回顧録』(中央公論新社)も同様だ。この書でくっきりと見えてくるのは、稀代の「戦略的リアリスト」たる安倍晋三の姿である。回顧録で語られたいくつものエピソードからそれを再現してみよう。

この記事だけをYahoo!ニュースで読む>>
カテゴリ: 政治
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
橋本五郎(はしもとごろう) 『読売新聞』特別編集委員。1946年秋田県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科を卒業後、読売新聞社に入社。論説委員、政治部長、編集局次長を歴任。2006年より現職。『読売新聞』紙上で「五郎ワールド」を連載するほか、20年以上にわたって書評委員を務める。日本テレビ『スッキリ』、読売テレビ『ウェークアップ!ぷらす』、『情報ライブミヤネ屋』ではレギュラーコメンテーターとして活躍中。2014年度日本記者クラブ賞を受賞。著書に『範は歴史にあり』(藤原書店)『「二回半」読む――書評の仕事1995-2011』(以上、藤原書店)『不滅の遠藤実』(共編、藤原書店)『総理の器量』『総理の覚悟』(以上、中公新書ラクレ)『一も人、二も人、三も人――心に響く51の言葉』(中央公論新社)『官房長官と幹事長――政権を支えた仕事師たちの才覚』(青春出版社)など多数。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top