ポスト・ポスト冷戦時代の「無秩序」「無極」世界
Foresight World Watcher's 3Tips
今週もお疲れ様でした。米国のアントニー・ブリンケン国務長官が中国を訪問し、習近平国家主席と会談しました。緊張緩和に向けた大きな進展は見られなかったものの、双方が「デカップリング」から「デリスキング(脱リスク)」への道を模索していることは確かなようです。フォーサイト編集部が週末に熟読したい記事3本、皆様もよろしければご一緒に。
China Is Ready for a World of Disorder【Mark Leonard/Foreign Affairs/6月20日付・雑誌版7・8月号】
「中国と米国は、冷戦後の秩序が終わったという点では一致しているが、その後がどうなるかについての見方はまったく異なる。ワシントンでは、大国間競争の復活には、米国がソ連との冷戦に勝利するのに役立った第二次世界大戦後の秩序の中核をなす同盟関係や制度の再活性化が必要だと考えられている。この更新された世界秩序は、世界の大半を取り込むことを意図しており、中国とその最も重要なパートナー――イラン、北朝鮮、ロシア――は、その外側に孤立したままになっている」
「しかし北京は、ワシントンの努力は無駄だと確信している。中国の戦略家たちの目には、他国が主権とアイデンティティを求めることは、冷戦型のブロックの形成とは相容れない取り組みであり、中国が大国としての地位を占めることのできる、より分断され、多極化した世界を生み出すものだと映っている」
「つまるところ、北京の理解はワシントンの理解より正確であるかもしれず、世界で最も人口の多い国々の願望により近いものなのかもしれない。米国の戦略が、過ぎ去った時代の対称性と安定性へのノスタルジックな願望に駆られ、消えゆく秩序を更新しようとする無益な探求に過ぎないのであれば、うまくいくはずがない。対照的に、中国は無秩序、非対称性、断片化によって定義される世界に向けて準備を進めている」
米「フォーリン・アフェアーズ」誌のサイトでは6月20日から、雑誌版7・8月号の掲載記事の一部オンライン公開が始まった。いま紹介した「無秩序な世界に備える中国」もその1本で、著者は英欧州外交問題評議会(ECFR)の理事であるマーク・レナード。中国との対立を新たな冷戦と捉え、かつてソ連との間で冷戦を戦った“西側”という枠組みの強化を諮る米国と、第二次大戦後の世界構造の維持は無駄であり、このシステムの破綻に備えている中国という図式で、両国の対応の差を描いている。
「米国は、政策立案者らが対ソ連で成功した戦略を復活させようとしており、この[第二次大戦後の]歴史が繰り返されていると考えている。そのため、米国は世界を分裂させ、同盟国を動員している。北京はこれに同意せず、世界はイデオロギー対立より自己決定と多国間協調が優先される時代に入りつつあるとの見方に賭け、これに適した政策を追求している」
このように見るレナードは、「北京の判断が正確である可能性が高い」理由として、現在と冷戦期との3つの差異を挙げる。……
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