木星の衛星「エウロパ」へ旅をする21行の詩

2023年7月2日
タグ: 宇宙
エリア: 北米
全米議会図書館ので著書『The Hurting Kind』を朗読するエイダ・リモン (C)REUTERS
 
木星の衛星エウロパには、分厚い氷の地殻の下に生命に適した環境があると考えられている。NASAは2024年10月に探査機を打ち上げる予定で、その外装に刻む21行の詩が6月1日に公開された。米国の桂冠詩人エイダ・リモンが思いを語る。

[ワシントン発(ロイター)] 米国の詩人であるエイダ・リモン(47)は、木星の衛星エウロパに向かうNASA(米航空宇宙局)の探査機「エウロパ・クリッパー号」に搭載する詩を書くよう依頼されたとき、その名誉に興奮した後、仕事の偉大さに戸惑いを感じたという。

 メキシコにルーツを持つリモンは、2022年7月にラテン系として初めて第24代桂冠詩人(Poet Laureate)に指名された。桂冠詩人は、米議会図書館が全米トップの詩人に授与する称号だ。

「探査機に搭載する詩なんて、どこから始めればよいのだろう」——。米議会図書館で詩の依頼を受けた時、彼女は頭を抱えたという。それからちょうど1年後の6月1日夜、米連邦議会議事堂の向かいにある図書館でセレモニーが行われ、リモンの21行の作品「In Praise of Mystery: a Poem for Europa」が初めて公開された。リモンが一般の観客の前で朗読すると、スタンディングオベーションが起こった。この詩は7つの3行詩からなる自由詩で、エウロパ・クリッパー号の外装にリモンの筆跡で刻まれることになっている。

 現在、ロサンゼルス近郊のNASAジェット推進研究所で組み立てられているエウロパ・クリッパー号は、NASAがこれまで惑星間ミッションで打ち上げた探査機の中で最も大きい。2024年10月にフロリダ州のNASAケネディ宇宙センターから打ち上げられ、16億マイル(26億km)の旅を経て2030年に木星周回軌道に到達する予定だ。

 科学者は、エウロパに生命に適した環境が存在する可能性があると強く信じており、太陽電池を搭載したクリッパー号は、エウロパの氷の地殻の下にある広大な海を調査するための機器を載せている。宇宙船がエウロパを周回し続けると、木星の強力な放射線帯に長時間近づき過ぎるため、宇宙船はエウロパをかすめて飛ぶことを50回近く繰り返すと予想されている。

2つの水の世界をつなぐ

 リモンの "Poem for Europa "は、科学に対する瞑想というよりは(最初の行はロケット打ち上げを暗示しているようだが)、自然への賛歌であり、自然が人間に与える畏敬の念である。

 タイトル以外には、エウロパについて明確な言及はないが、木星の衛星の1つであること、そして地球との共通点である水について次のように言及している。

「第2の月よ 私たちも水でできている 広大で手招きする海を持つ」……

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