[ロンドン発/ロイター]化石燃料への依存度を引き下げる競争が、クリーンなエネルギーの需要の高まりに後れを取らないようメーカーやサプライチェーンにプレッシャーをかけている。それが特に顕著なのは欧州連合(EU)だ。EUでは、2030年までに全エネルギーの42.5%を再生可能エネルギーで賄うという、法的拘束力を有する目標をすでに最終決定してしまっている。
業界団体のウィンドヨーロッパによると、EUが再生可能エネルギーの比率を現在の32%から42.5%という新たな目標まで引き上げるには、風力発電の容量を現在の205ギガワット(GW)から420GWへと2倍以上に、うち洋上風力発電の容量にいたっては17GWから103GWと6倍にまで増やす必要がある。
しかし、現時点ではイギリス、オランダ、ノルウェーの洋上プロジェクトは、コスト高とサプライチェーンの制約により延期または棚上げになっている。9月8日にイギリスで行なわれた再生可能エネルギー向け補助金をめぐる入札では、洋上風力発電についての応札は皆無だった。これもコスト高への懸念ゆえの結果だ。
ジュピター・アセット・マネジメントの投資マネジャー、ジョン・ウォレス氏は、「こうした傾向が各プロジェクトの長期休止につながれば、2030年の再生可能エネルギー目標の多くは達成が難しくなる」と語る。
EUが今年、新たな再生可能エネルギー目標に合意する以前から、オルステッド、シェル、エクイノール、風力タービンメーカーのシーメンス・ガメサ、さらにはウィンドヨーロッパも、洋上風力発電産業の規模は気候変動目標を達成するのに不十分だと警告していた。
コロナ禍に端を発するサプライチェーンの混乱がロシア・ウクライナ戦争で深刻の度合いを強め、それに伴う輸送コスト上昇、原材料費高騰、金利上昇、インフレ進行が風力発電事業者の利益を圧迫している。
独エネルギー大手RWEのマルクス・クレッバーCEO(最高経営責任者)は、交流サイトのLinkedInに、洋上風力発電産業が急速に拡大すると期待されたまさにそのタイミングで様々な問題が重なり、気候変動目標の達成を危うくしていると投稿した。
「2030年の再生可能エネルギーおよび風力発電の目標と、現在私たちが辿っている道程に大きな隔たりがあるのは明白だ。私たちは成長こそしているが、それも十分なペースにはほど遠い」と、世界風力会議(GWEC)のベン・バックウェルCEOは語った。
大きいことはいいことか?
この20年の急成長の中で技術コストが削減され、一部の国では、洋上風力発電は化石燃料と同等ないし安価にすらなった。ただし、タービンの大型化・高効率化を目指す競争は性急すぎたかもしれないと疑問を呈する経営者やアナリストもいる。
タービンの大きさは10年ごとにざっと2倍になり……
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