シンワル氏殺害に向けたバイデン大統領の虚ろなお祝い

Foresight World Watcher's 5Tips

執筆者:フォーサイト編集部 2024年10月19日
エリア: 中東 北米
イランの最高指導者ハメネイ師はシンワル氏殺害について、「抵抗は指導者の死後も止まなかった。これからも止むことはない」とのメッセージを発した[シンワル氏を描いた看板=2024年10月19日、イラン・テヘランのパレスチナ広場](C)EPA=時事

 今週もお疲れ様でした。ハマス最高幹部のヤヒヤ・シンワル氏がイスラエル軍によって殺害されたことを受け、アメリカのジョー・バイデン大統領は17日、次のような声明を発表しました。

「私のイスラエルの友人たちにとって、これは間違いなく安堵と追憶の日だ。2011年にオバマ大統領がウサマ・ビンラディンを急襲し殺害することを命じた後、アメリカ全土で見られた光景と似ている」
「ヤヒヤ・シンワルは、これらすべての目標達成において克服できない障害であった。しかし、その障害はもはや存在しない」

 ガザ地区の指導者だったシンワル氏の殺害をもってイスラエルが勝利宣言を行う可能性も、確かに想定され得るものでした。しかし、実際のところイスラエルは、戦闘継続の構えを崩していません。ハマスの方でも改めて後任選びが進んでいます。

「ハマスとは人々の心に根付いた思想」との指摘がありますが、組織上の最高幹部を排除すればハマスが瓦解し脅威を根絶できるという発想は、やはり現実的ではないのだろうと思います。後任の人物のスタンスによっては、イランの関与がさらに深まる可能性があります。そしてそれは、エジプトやカタールといったこれまでガザ停戦の仲介役を担ってきた国々の影響力の相対的低下にも繋がり得る問題でしょう。

 シンワル氏殺害に関する記事ほか、中東情勢を改めて捉え直すうえで役に立つ論考を中心にピックアップしました。フォーサイト編集部が熟読したい海外メディア記事5本、皆様もよろしければご一緒に。

[SITUATION REPORT]What Sinwar's Death Means for Hamas and the War in Gaza【Amy Mackinnon/Foreign Policy/10月17日付】

「2023年10月7日のイスラエル襲撃事件の首謀者のひとりであるハマス指導者、ヤヒヤ・シンワルが、ガザ地区でのイスラエル軍の作戦により水曜日[10月16日]に死亡した。これは、ハマスにとって戦争開始以来最大の打撃となった」
「当初アナリストらは、シンワルの死はイスラエルがガザでの勝利を宣言するきっかけになる可能性があると見ており、[米ジョー・]バイデン政権がイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相にそうするよう促す可能性が高いと指摘していた。[略]しかし、木曜日の演説でネタニヤフ首相は、人質が解放されるまで『全力』で戦い続けると誓った」

 このように報じているのは、米「フォーリン・ポリシー(FP)」誌の旗艦ニューズレター「シチュエーション・リポート」の最新10月17日号「シンワルの死がハマスとガザでの戦争にとって意味すること」だ。

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