トランプ関税は100%の大間違い。それで世界はどうするのか
Foresight World Watcher's 8 Tips

4月2日に米トランプ政権が発表した「相互関税」が国際社会を揺らしています。発表翌日の日米欧株式市場では時価総額500兆円以上が吹き飛び、アメリカ国内でも大規模なデモが広がっています。
主要メディアでも議論百出、というより批判一色の様相です。関税率の算出方法が荒唐無稽と多くの識者が指摘。国内産業の保護を狙ってスムート・ホーリー法(1930年関税法)を定めた、ハーバート・フーバー大統領(共和党)にトランプ氏を擬する論をご覧になった読者も多いでしょう。そのスムート・ホーリー法が招いたものは、世界経済のブロック化と交易の冷え込み。これにより米国自身のGDP(国内総生産)も大きく押し下げられました。なにをやっているのだアメリカよ……。
ただ、忘れてはならないのは、トランプ政権はこの関税政策を、寝ぼけて作ったわけではないだろうということです。トランプ政権は国際秩序の作り替えを極めて自覚的に、アジェンダ実現的に行っていると見るべきです。小学校の算数並みの計算式も、根拠薄弱なのは百も承知。アメリカの負担に各国がただ乗りしてきた世界システムを変えるのだという、強い意志の表明でしょう。
そして、もうひとつ忘れてはならないのは、トランプ政権の“武器”は関税が最後ではないことです。FRB(米連邦準備理事会)と各国中央銀行が結んでいる、通貨スワップ協定をカードにする懸念も上がっています。混乱を収束させ対米関係を管理するための、具体的な仕組み作りが急務です。
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President Trump's mindless tariffs will cause economic havoc【Economist/4月3日付】
「今週、トランプ氏が――歴史、経済、そして貿易の専門知識について――語ったことは、ほぼすべてが完全に誤っていた。歴史についての彼の理解は完全に倒錯している」「経済学についてのトランプ氏の主張はまったくのナンセンスだ」「貿易相手国すべてとの間で個別に貿易収支の均衡を主張するのは、狂気の沙汰である」「トランプの[関税についての]専門知識の理解力は哀れを誘うものだった」
これは、世界を揺るがす関税政策について、米大統領の数々の政敵や批判派が投げかけた言葉の集積ではない。「経済に大混乱をもたらすトランプ大統領の無分別な関税」(4月3日付)という英「エコノミスト」誌の記事1本のなかに登場した批判だ。底なしの酷評と言っていい。

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