「今週のトランプ」ラウンドアップ
「今週のトランプ」ラウンドアップ (12)

トランプ大統領の発言とアクション(5月28日~6月5日):米中首脳電話会談で融和モード演出、マスク氏とのバトルは「プロレス」? 

執筆者:安田佐和子 2025年6月6日
エリア: アジア 北米
両者による非難の応酬は続いても「せいぜい1週間」との声も(C)AFP=時事
トランプ大統領と政権キーパーソンから飛び出した1週間分の発言を、ストリート・インサイツ代表取締役・安田佐和子氏がマーケットへの影響を中心に詳細解説。▼「親切な男でいるのもここまでだ!」▼中国にとってハーバード大は「党の学校」?▼「ロシアの貿易相手国に500%関税」の2次制裁法案▼首脳電話会談の内容、だいぶ違う米中の発表▼商務省産業安全保障局の予算増額を訴えたラトニック氏▼トランプ大統領とマスクCEOがSNS上で激突!

 

「親切な男でいるのもここまでだ!」

「目には目を、歯には歯を」とは、ドナルド・トランプ大統領が一番好きな聖書の一節だ。マタイによる福音書5章38-42節で確認できる。5月28日に、記者から「TACOトレード(Trump Always Chickens Out=『トランプはいつも尻込みする』に由来、前回の本コラムをご参照)に関し質問を受けた後、トランプ氏はこの言葉を実践した。5月30日、ペンシルベニア州ピッツバーグ郊外で行った演説で、鉄鋼・アルミ関税の25%から50%への引き上げを発表。トランプ大統領を煽れば、「倍返し」の憂き目に遭うと印象付けた。 

 同じ日に、トランプ氏は中国に対しても5月に合意した内容を順守していないとして、牙を剥いた。米中は5月10-11日の閣僚協議で90日間にわたる115%の関税引き下げに合意した。4月2日以降に中国が講じた非関税報復措置の一時停止あるいは撤廃も合意され、米国側の理解では、レアアースの輸出禁止はこれに含まれているはずだった(詳細は本コラム5月16日をご参照)。しかし、トランプ氏は「中国がこの合意を完全に破った」「親切な男でいるのもここまでだ!」と猛批判。その後、記者団には近いうちに中国の習近平国家主席と電話会談を行うと述べたものの、怒りの矛先を向けたのは明らかだった。

【トランプ大統領、中国を批判】
出所:Donald J. Trump/Truth Social 拡大画像表示

中国にとってハーバード大は「党の学校」?

 もっとも、米国も5月12日の合意発表以降、中国に対し強硬な措置を講じてきた。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
安田佐和子(やすださわこ) ストリート・インサイツ代表取締役、経済アナリスト 世界各国の中銀政策およびマクロ経済担当の為替ライターの経験を経て、2005年からニューヨークに拠点を移し、金融・経済の最前線、ウォール街で取材活動に従事するかたわら、自身のブログ「My Big Apple NY」で現地ならではの情報も配信。2015年に帰国、三井物産戦略研究所にて北米経済担当の研究員、双日総合研究所で米国政治経済や経済安全保障などの上級主任/研究員を経て、株式会社ストリート・インサイツを設立。その他、トレーダムにて為替アンバサダー、計量サステナビリティ学機構にて第三者委員会委員、日本貴金属マーケット協会のフェローを務める。
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