「今週のトランプ」ラウンドアップ
「今週のトランプ」ラウンドアップ (29)

トランプ大統領の発言とアクション(9月25日~10月2日):米政府閉鎖は共和党に「棚からボタ餅」

執筆者:安田佐和子 2025年10月4日
エリア: 北米
ジェフリーズ下院院内総務(民主党)は、「不法移民ファースト」を非難する共和党ミーム戦略のターゲットに[2025年10月3日、アメリカ・ワシントンDC](C)EPA=時事
トランプ大統領と政権キーパーソンから飛び出した1週間分の発言を、ストリート・インサイツ代表取締役・安田佐和子氏がマーケットへの影響を中心に詳細解説。▼争点はヘルスケア、民主党は「不法移民ファースト」?▼ミームを制する者は選挙を制す▼デマゴーグの「煽り」も「熟議」に役立つ?

 

争点はヘルスケア、民主党は「不法移民ファースト」?

 米国の会計年度末である9月30日、つなぎ予算が成立せず政府機関の閉鎖が迫る中、ホワイトハウスはX(旧Twitter)で秒読みを開始した。世界的ヒットを記録したキーファー・サザーランド主演のドラマ『24 -TWENTY FOUR-』のごとくリアルタイムで進行していく演出のもと、タイムリミットである10月1日午前0時まで、刻一刻とカウントダウンされていく。その時刻表示の下に浮かび上がった煽り文句は、「民主党による閉鎖(DEMOCRAT SHUTDOWN!)」だった。

【政府閉鎖へのリアルタイム・カウントダウン】

 政府機関の閉鎖は、ドナルド・トランプ政権1期目の2018年12月から19年1月以来、約7年ぶりとなる【チャート1】。今回、政府機関の閉鎖を余儀なくされた理由は、上院民主党が下院で通過したつなぎ予算案に反対したためだ。

 【チャート1:1976年以降、政府機関の閉鎖】
出所:米経済分析局、各メディア資料よりストリート・インサイツ作成 拡大画像表示

 下院は9月19日、11月21日まで約7週間のつなぎ予算案を賛成217票、反対212票で可決した。しかし、上院は共和党が53議席、民主党系が47議席の勢力で、議事妨害(フィリバスター)を阻止して最終採決に進むための討論打ち切り(クローチャー)に原則60票が必要だ。同日、下院で可決済みの共和党のつなぎ予算案だけでなく、民主党の提案も否決され、以降の交渉は暗礁に乗り上げたままだ。

 民主党が共和党のつなぎ予算に反対する理由は、共和党のみで成立した「一つの大きく美しい法(OBBBA、足元でトランプ政権は「The Working Families Tax Cut Act=WFTCA」と呼ぶ)」に起因する。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
安田佐和子(やすださわこ) ストリート・インサイツ代表取締役、経済アナリスト 世界各国の中銀政策およびマクロ経済担当の為替ライターの経験を経て、2005年からニューヨークに拠点を移し、金融・経済の最前線、ウォール街で取材活動に従事するかたわら、自身のブログ「My Big Apple NY」で現地ならではの情報も配信。2015年に帰国、三井物産戦略研究所にて北米経済担当の研究員、双日総合研究所で米国政治経済や経済安全保障などの上級主任/研究員を経て、株式会社ストリート・インサイツを設立。その他、トレーダムにて為替アンバサダー、計量サステナビリティ学機構にて第三者委員会委員、日本貴金属マーケット協会のフェローを務める。
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