高市の「存立危機事態」発言を世論が支持する誤算
「存立危機事態」を巡る高市早苗総理の発言が尾を引いている。中国政府は自国民に日本への渡航自粛を呼びかけた。今月18日には北京を訪れた外務省の金井正彰アジア大洋州局長に対し発言の撤回を求めたが、金井は応じなかった。さらにこの会談終了後、中国外務省の劉勁松アジア局長がポケットに手を突っ込んだまま金井と立ち話する映像が流れ、その態度が「不遜だ」などと日本国内で反発が起こっている。
与党幹部「日中の問題は長引く。高市総理は答弁を撤回しないし、中国も対応を変えないだろう」
中国は今月再開されたばかりの日本の水産物の輸入についても事実上停止することを伝えてきており、高市発言に端を発した日中関係の緊迫化は経済にも影響を与え始めている。小泉純一郎政権で日朝交渉を担当した田中均元外務審議官は自身のYouTubeチャンネルで、「台湾問題は中国にとって核心的利益」だとして高市に「国会の場で発言を撤回するよう」促した。
しかし、ネットを中心とした世論は高市の“勇み足”に寛容だ。むしろ、今回の問題のきっかけを作ったのは衆議院予算委員会で質問に立った岡田克也元外務大臣ら立憲民主党の議員だとして、立憲バッシングが起き始めている。
立憲民主党・本庄知史政調会長「質問した岡田克也議員が間違っていたと。あるいはしつこかったと。こういった言説がSNSだけではなくて大手のメディア、テレビでもコメンテーターなども含めて取り上げられているということは、極めて問題があると思っています」(11月19日)
岡田の元政策秘書である本庄政調会長は、岡田に批判を加えている一部のテレビメディアなどを牽制した。ただ、この発言は逆に、それだけ立憲を取り巻く世論が厳しいと本庄が受け取っていることを物語っている。
参院選後の立憲は、国民民主党の玉木雄一郎代表を首班とする野党主導の非自民政権樹立を目指したものの、自民と維新の連立により頓挫。高市政権が驚異的な支持率を記録する中、本来なら国会で高市と真正面から対峙し論戦を張らなければならない野党第一党は、いま自信を喪失している。
高市政権が誕生したばかりのこと、立憲の幹部の1人がこんなことを口にした。
「とにかくいまは静かにしていることが肝心だ。“高市人気”という旋風が過ぎ去るまでは、変に相手を刺激しても何にもならない」
この幹部は、高市を怒らせて解散総選挙に突き進まれたら、立憲が壊滅的な打撃を受けると懸念している。
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