中国の対日威圧に「終わり」はあるか
Foresight World Watcher's 6 Tips
日中関係のさらなる悪化が懸念されます。台湾有事は日本の存立危機事態になりうるという、高市早苗首相の国会答弁があったのが11月7日。以降、ここまで中国は、自国民の訪日自粛や日本産水産物の輸入停止などの措置を打ち出しています。今後は日本人向け短期滞在ビザの制限やレアアース(希土類)の輸出制限なども想定されます。
海外メディアの反応としては、まずは「タカ派の高市首相にさっそく試練」といったものが多いのですが、もう一歩議論を深めた報道では、この状況に出口が見えないことが指摘されます。「中国には圧力をかけるためのルールブックがあり、彼らはその章をひとつずつ進めている」「中国側は脱出路を一切提供していない。問題は、ゲームの終わりはどのようなものかということだ」と書いていたのは米「ニューヨーク・タイムズ」紙。
貿易や企業活動など経済への影響のみならず、懸念のポイントはもう一つ。10月末の関税合意で中国と“暫定手打ち”をした米国です。米中間選挙までは休戦とはいえ、戦略的な競争関係が変わったわけではありません。日本が米国の利益を損なう形で中国との関係回復を図るようなら、ドナルド・トランプ大統領は黙ってはいまい――そう記しているのは米「フォーリン・ポリシー(FP)」誌です。同誌の視点は、中国が先の関税合意で1年延期になったはずのレアアース輸出制限(中国は米国だけでなく全世界を対象にした枠組みにしています)を日本に対して取った場合、米国はどのような対応をするかということでした。
ほかには、日本型の移民受け入れ体制が持つ可能性に注目しつつ、その阻害要因を指摘した論考(執筆者は日本の研究機関に所属する3人)、“AI失業”に中国が抱いている恐れの分析(米中のAI戦略の根本的な目的意識の違いにも言及されていて、これも興味深いものでした)など、フォーサイト編集部が熟読したい海外メディア記事6本。皆様もよろしければご一緒に。
Japan's Stalled Immigration Experiment【Gracia Liu-Farrer, Takeshi Miyai, Yu Korekawa/Foreign Affairs/11月18日付】
「日本は、高齢化と労働力減少に苦しむ経済を支えるため、外国人労働者を緊急に必要としている。2018年以降、政府は移民制度改革を相次いで承認し、より多くの移民労働者を管理された形で受け入れ、経済的圧力を緩和する道筋を整えてきた。こうした改革は昨年発表された拡大された受け入れ枠で頂点に達した」
「しかしながら、日本の反移民感情の高まりは、国内の右派の歓心を買い、過去の政権が移民政策で成し遂げた進展を逆転させる誘惑を高市に与えるかもしれない。もし日本が、ポピュリスト的な政治的混乱や、移民労働者の権利保護能力を含む自国の制度的脆弱性から現実的な移民モデルを守れなければ、現在および今後数十年にわたって必要となる労働力を確保する絶好の機会を無駄にするおそれがある」
米「フォーリン・アフェアーズ」誌サイトに登場した「日本の停滞した移民受け入れ実験」(11月18日付)は、移民受け入れと排外主義の高まりという、この国が今抱える問題を冷静かつストレートに論じる論考だ。
筆者は早稲田大大学院アジア太平洋研究科教授のファーラー・グラシア、国立社会保障・人口問題研究所の人口動向研究部第4室長、宮井健志と国際関係部長、是川夕の3名。「反移民感情の高まりが、移民労働者をこれまで以上に必要とする時期と重なっている」という「逆説的な状況」を分析する。
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