「今週のトランプ」ラウンドアップ
「今週のトランプ」ラウンドアップ (54)

トランプ大統領の発言とアクション(4月10日~17日):ホルムズ海峡「逆封鎖」はアメリカに勝利を呼び込むか

執筆者:安田佐和子 2026年4月18日
エリア: 中東 北米
「逆封鎖は地上部隊投入より賢明な策」と評価する声は多い (C)EPA=時事
トランプ大統領と政権キーパーソンから飛び出した発言を、ストリート・インサイツ 代表取締役・安田佐和子氏がマーケットへの影響を中心に詳細解説。▼米中央軍が約15年前から練っていた構想▼イランの対抗策に4つの選択肢▼中国への打撃は?▼ベッセント財務長官、5月訪日の狙いは何か

「指導者は獅子と狐の双方の才能をもたねばならない」――これは『君主論』の一節だ。J・D・バンス副大統領がイスラマバードで行ったイランとの交渉が決裂した直後の4月12日、ドナルド・トランプ大統領はホルムズ海峡の“逆封鎖”を発表した。米中央軍は翌13日午前10時から、ホルムズ海峡を通過してイラン国内の港を往来する船舶への航行阻止を表明し、対象の船舶には臨検・乗り込み・捜索・拿捕に踏み切る方針を打ち出した。16日には、米海軍中央軍が「すべてのイラン船舶、OFAC(米財務省外国資産管理局)制裁対象船舶、禁制品輸送疑い船舶は場所を問わず臨検・拿捕の対象となる」として対象拡大を通知

 主要メディアはバンス氏率いる米国とイランとの交渉決裂を「失敗」と評価したが、トランプ大統領の発表からわずか24時間以内に封鎖が発動され、3日後には対象が全制裁船舶へと拡大されたという迅速さは、一連の展開があらかじめ用意された筋書きだったことを示唆している。結果論とはいえ、イスラマバードでの交渉が、逆封鎖に先立つアリバイ作りだったと見えなくもない。

 米国とイランは4月21日までの停戦に合意しているが、ピート・ヘグセス国防長官は16日の会見で、期限切れまで停戦合意が維持されない場合に備え、逆封鎖を必要な限り継続するとともに、大統領の命令ひとつで攻撃は「準備万端(locked and loaded)」だと明言した。米国はニミッツ級空母「ジョージ・H・W・ブッシュ」と随伴艦を中東に派遣しており、同地域に展開する空母は「エイブラハム・リンカーン」「ジェラルド・R・フォード」と合わせ3隻となる。米国はイランに停戦合意へ向けた圧力を強めている。

 一方、イランのアッバス・アラグチ外相は4月17日、停戦期間中はイランの設定した航路に限り、ホルムズ海峡を開放する意思を表明した。トランプ大統領もこれを歓迎、「イランはホルムズ海峡を二度と封鎖しないことに同意した」とトゥルースソーシャルに投稿した。

 しかし、両者の発表内容には食い違いがあるうえに、イランは革命防衛隊が許可した船舶のみ、通航を認めるとも発表している。加えて、トランプ大統領はイランに対する封鎖は継続としており、“開放”の行方は不透明だ。実際、アラグチ外相の宣言を受けて一度は動き出した船舶群は、数時間後にほぼ全船が海峡通過を断念したと伝えられる。

米中央軍が約15年前から練っていた構想

 このホルムズ海峡逆封鎖は、イスラマバードでの交渉決裂を受けてひねり出した即興的な措置ではない。保守系シンクタンクであるアメリカ外交政策評議会(AFPC)のイラン・バーマン上級副会長によれば、フロリダ州タンパに拠点を置く米中央軍は、既に約15年前からホルムズ海峡の意図的「狭窄(narrowing)」への対抗策として構想を練っていたという。

カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
安田佐和子(やすださわこ) ストリート・インサイツ代表取締役、経済アナリスト 世界各国の中銀政策およびマクロ経済担当の為替ライターの経験を経て、2005年からニューヨークに拠点を移し、金融・経済の最前線、ウォール街で取材活動に従事するかたわら、自身のブログ「My Big Apple NY」で現地ならではの情報も配信。2015年に帰国、三井物産戦略研究所にて北米経済担当の研究員、双日総合研究所で米国政治経済や経済安全保障などの上級主任/研究員を経て、株式会社ストリート・インサイツを設立。その他、トレーダムにて為替アンバサダー、計量サステナビリティ学機構にて第三者委員会委員、日本貴金属マーケット協会のフェローを務める。
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