クオ・ヴァディス きみはどこへいくのか?

デトロイト上空 日本人の教えた「テロ」

執筆者:徳岡孝夫 2010年2月号
エリア: アフリカ 北米

 料理をオンラインで持ってくる店がある。テーブル上のパソコン端末で好きなものを検索してクリックすると調理室が情報を受け、注文した順に持ってくる。刻々の合計金額が表示され、割り勘にするなら一クリックで一人なんぼと表示される。場所は横浜駅西口某ビル二十五階という。息子の車の助手席に乗って出かけた。これも正月休みの話のネタである。 高速に乗って驚いた。夜の外出など滅多にしないから忘れていたが、視力の弱い私の見る道路照明は無いに等しい。漆黒の闇を突き進む、SF映画中の人物になったような錯覚を抱く。 後ろの席には嫁と孫娘二人が座り、くつろいで女三人のお喋りをしている。私は思い出した。私が運転していた頃、日本の車にはシートベルトがなかった。ドア・ロックもなかった。危険千万である。だが、また思えば、我が家からすぐの山裾に、こんなスピードで走れる高速道路も、昔は存在しなかった。

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執筆者プロフィール
徳岡孝夫(とくおかたかお) 1930年大阪府生れ。京都大学文学部卒。毎日新聞社に入り、大阪本社社会部、サンデー毎日、英文毎日記者を務める。ベトナム戦争中には東南アジア特派員。1985年、学芸部編集委員を最後に退社、フリーに。主著に『五衰の人―三島由紀夫私記―』(第10回新潮学芸賞受賞)、『妻の肖像』『「民主主義」を疑え!』。訳書に、A・トフラー『第三の波』、D・キーン『日本文学史』など。86年に菊池寛賞受賞。
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