「いうなれば阪神大震災は『パンドラの箱』だった。(中略)それと同じように、大地震をきっかけに、この国や社会の矛盾、災厄、憎悪、絶望……が一挙に噴き出した。それが阪神大震災の『意味』なのではないだろうか」(和田芳隆『復興の闇・都市の非情』五月書房刊 一九〇〇円)
「寡黙なノンフィクション」とでも評すればよいのだろうか。本書には内容全てを端的に俯瞰できる件があまり見当たらない。そして、饒舌に何かを語るということもない。しかしそれでいて、地震が発生した九五年一月十七日からの五年間に神戸で何が起こったかをこれほど雄弁に伝えた書には、そう出会えるものではないだろう。

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