三十七年ぶりの増資に踏み切ったものの、上場への道はまだ遠い
企業の成長を支えてきた理念そのものが、市場の時代に足かせとなる。“伝統的”という形容も、あっという間に不信を示すものになってしまった。日本型経営の蹉跌は、理念と伝統が強調されていた企業ほど、乗り越え難い苦痛となる。「大家族主義」を掲げ、日本の石油元売り業界をリードしてきた出光興産も、その例外ではない。
五月二十三日、出光は一九六三年以来の増資を突如として発表、業界関係者の度肝を抜いた。彼らを驚かせたのは、三十七年ぶりという時間でも、それまでの資本金の約三十倍に当たる、二百九十億円という増資規模でもない。増資の引き受けリストに、住友銀行、住友信託銀行、東海銀行など五金融機関が名を連ねていたことだ。

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