あの騒ぎはいったい何だったのか――鳴り物入りで始まったBSデジタル放送が早くも一年で青息吐息だ。電波利権を確保するため奔走した民放キー局のなかには、“撤退”を模索する動きが出始めた。 BS(放送衛星)デジタル放送用の受信機の販売低迷が続き、“BSショック”が業界に広がったこの夏、あるBSデジタル局の社長が親会社である民放の幹部に泣きついた。「増資をしてくれないと、数年で債務超過に陥るのは目に見えている」 この会社は昨年十二月の放送開始以来、九月までに六十億―七十億円まで債務が拡大、今年度中に百億円を突破する勢いだ。一局あたり百億円近いといわれるデジタル化の設備投資の償却負担に加え、売り物であるハイビジョンや双方向機能を満載した番組制作にカネがかかるのが原因だ。赤字を補填するはずの広告収入も不況下で目減りしている。当初計画ではなんとか三年間もたせる資本金を予想以上に早く食いつぶす可能性がでてきた。

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