マハティール首相が引退した。世間は二十二年間の功績を称えるが、その国家運営手法を精査熟察すると数々の矛盾も浮かび上がる。 ワシントン・アーヴィングの小説『スケッチブック』の主人公、リップ・ヴァン・ウィンクルがもし今、マレーシア中南部のキャメロン高原で二十年の眠りから覚めたとしたら、自分がどこにいるのか見当もつかないに違いない。国土を南北に走る高速道路には国産自動車プロトンが走り、プランテーションがあった場所はゴルフコースに変わり、ペナンが電子機器の一大生産拠点となっているのだから。そして、一九七〇年代後半には天然ゴムやスズ、ヤシ油の輸出くらいしか収入源のなかった国に、今では世界一、二の高層ビルがそびえ立っている。
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