饗宴外交の舞台裏 (153)

オバマ大統領が最高のもてなしに隠した「対中人権外交」

執筆者:西川恵 2011年2月2日
エリア: 北米 アジア
ブッシュ政権時代とは異なる手厚いもてなしを受けた(c)AFP=時事
ブッシュ政権時代とは異なる手厚いもてなしを受けた(c)AFP=時事

 中国の胡錦濤国家主席が1月18日から21日まで米国を国賓で訪問したが、私が注目したのはオバマ大統領がどのようにもてなすかだった。というのは前回(2006年)、ブッシュ政権時代に胡主席が訪米した時のことが念頭にあったからだ。  この時、米中は訪問形式を巡って対立した。最高レベルのもてなしの国賓待遇を求める中国に対し、米国は中国の軍備拡張、人権問題などを盾に「国賓で迎えるには両国関係はまだ十分に成熟していない」と伝えた。ここには当時のブッシュ大統領の考えが反映していた。調整は火花を散らし、結局、中国は「国賓訪問」、米国は「公式訪問」と、都合よく解釈した。  本番のホワイトハウスの歓迎式典では、米国は21発の礼砲や米独立戦争時の衣装の行進など国賓並みの待遇を与えたが、饗宴は譲らなかった。国賓であれば豪華な晩餐会だが、公式訪問ということで昼食会とし、内容もワーキングランチをちょっと豪華にしたものだった。

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執筆者プロフィール
西川恵(にしかわめぐみ) 毎日新聞客員編集委員。日本交通文化協会常任理事。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、専門編集委員を経て、2014年から客員編集委員。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。著書に『皇室はなぜ世界で尊敬されるのか』(新潮新書)、『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、『ワインと外交』(新潮新書)、『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)、『知られざる皇室外交』(角川書店)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。
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