「規制仕分け」 ~医薬品インターネット販売禁止はどこに向かう?

執筆者:原英史 2011年3月6日
カテゴリ: 政治
エリア: アジア

 

今日6日から2日間にわたり「規制仕分け」が実施されている。
そもそもテーマ選定の問題(なぜこの12テーマなのか?)など、いろいろ指摘したいことがあるが、とりあえず、今日議論のなされた「医薬品インターネット販売」に話を絞りたい。
 
2時間ほどの議論を私なりに整理すれば、要するに、
・厚生労働省は、「通信販売禁止」の合理的根拠、つまり「なぜ対面販売より、通信販売が危険なのか」を説明しきれなかった(例えば、「対面販売なら顔色を見て判断できる」と主張するが、「薬局に買いに来るのは必ずしも本人でない」と言われると、答えがない)。
・一方、通信販売であっても、薬剤師が個別にアレルギー歴、服用薬品名などを確認し、たいていの対面販売以上に、安全性に十分配慮している事例が紹介された。
とりまとめは結局、「安全性を確保する具体的な要件の設定を前提に・・・通信販売の可能性を検討する」ということになった。
 
だが、こういった話は、2009年2月に厚生労働省令で「通信販売禁止(第3類を除く)」が定められて以降、何度となく繰り返されてきたことで、新味はない。
もっと踏み込んだ議論をするのかと期待していたので拍子抜けしたが、議論の中で、極めて気になる発言が2つほどあった。
 
第一に、「インターネット通販が危険だという合理的根拠を示せていない」という指摘に対し、規制を代弁する立場で参加した大塚厚生労働副大臣が「逆に、インターネット通販を解禁しなければならないという合理的理由も示してもらっていない」と切り返したこと。
 
大塚氏の論理によれば、医薬品というのは危険なものなので「原則は禁止」。よって、厚生労働省の側に「規制を課す合理的根拠」を示す責任などなく、逆に、解禁を求める側こそ「解禁を求める合理的理由」を示すべきということらしいのだが、これはあまりに暴論でないか。
 
もともと、医薬品のインターネット販売は2009年以前から行われていたわけで、これを「禁止」する以上、厚生労働省の側に、合理的根拠を示す責任があることは当然。従来から特段問題なく営業を行っていた事業者の「営業の自由」を、「医薬品は危険なものだから」という一言で奪ってよいなどという議論は、憲法違反だろう。
 
しかも、「医薬品は、生命・安全に関わる特殊な分野だから・・」という理由付けもあやしいもの。こうした議論を認めれば、ほとんどの規制分野は「特殊な分野」で、国が根拠なく自由に規制を決めてよいことになりかねない。
 
二つ目に、平野内閣府副大臣の発言。「規制改革担当」という立場ながら、なぜか逆の立場をとり、特に「インターネットでの販売が拡大すると、薬局がつぶれてしまう。これは政治的な問題だ」と繰り返した。
これは、この問題が、表向きは「安全性の問題」を理由にしつつ、実は「薬局の経営上の問題」、という本音を正直に吐露していたようにも思われた。
 
こうした関係政務三役の発言をみるに、仕分けとりまとめで一応「可能性を検討する」となったものの、合理的な「検討」が進められるのかどうか、甚だ疑わしいと言わざるを得ない。
 
そもそも、この問題の出発点は、法律(薬事法)で「インターネット通販の禁止」など何も定めていないのに、厚生労働省令で「禁止」と決めてしまったこと。
本来、こういう重大なルール設定は、法律で行うべきことだ。
今日の仕分けでは、「役所で検討せよ」というのでなく、「これは法律で決めるべき話なので、国会で議論を引き取る」という結論にして、あとは国会で議論すべきでなかったか。
 
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執筆者プロフィール
原英史 1966(昭和41)年生まれ。東京大学卒・シカゴ大学大学院修了。経済産業省などを経て2009年「株式会社政策工房」設立。政府の規制改革推進会議委員、国家戦略特区ワーキンググループ座長代理、大阪府・市特別顧問などを務める。著書に『岩盤規制―誰が成長を阻むのか―』、『官僚のレトリック』など。
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