ビンラディン捕捉成功の裏に新型無人機

執筆者:春名幹男 2011年5月4日
カテゴリ: 軍事・防衛
エリア: 北米 アジア

 約40分間にわたり展開されたビンラディン捕捉作戦。オバマ大統領ら米政府の安保関係閣僚たち。ホワイトハウスのシチュエーションルームに陣取って、事態の推移をリアルタイムで見守った。
 果たして、いかなる情景を目の当たりにしたのか、あるいはどのような画像が撮影されていたのか。ウォールストリート・ジャーナル紙は、上空に無人偵察機RQ-170がとどまり、現場の邸宅を撮影、人工衛星を経てホワイトハウスに送信した、と伝えている。
 作戦決行の前には、RQ-170は数百時間にわたって現場を撮影したとみられている。参考になるのは、2006年に在イラク・アルカイダの最高指導者、ザルカウィ容疑者を殺害した際、それより以前に無人偵察機プレデターがイラク・アルカイダ組織を対象に600時間もの映像を撮影していたという。
 問題は、今回の現場が首都に近く、陸軍士官学校などパキスタン軍の施設が多いことだ。恐らく無人偵察機でしかもレーダーにとらえられないステルス機能を備えたRQ-170が選択されたのは、パキスタン軍の防空機能を回避するためだとみられる。RQ-170は2009年にカンダハルで目撃され、アフガニスタン・パキスタン地域に試験的に配備されていることが分かったという。米軍はまだ、同機の性能の詳細を明らかにしていない。

フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
春名幹男(はるなみきお) 1946年京都市生れ。国際アナリスト、NPO法人インテリジェンス研究所理事。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授、早稲田大学客員教授を歴任。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『米中冷戦と日本』(PHP)、『仮面の日米同盟』(文春新書)などがある。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top